情報・通信
振る舞い検知AI搭載の「自律型EDR」で放送事業のセキュリティを強化
SentinelOneで実現した運用負荷を抑えた内製でのエンドポイント防御
お客様の課題
TEDのソリューション
導入製品
技術局
放送技術部(システム担当)
主任
土屋 航輔 氏
1963年に福島県初の民間テレビ局として開局した福島テレビは、報道・情報番組をはじめ、天気予報や防災情報の発信を通じて地域の安全・安心を支えています。この放送事業を継続するうえで不可欠なのが、営業支援、番組企画、編成、放送設備管理、会計、人事などを支えるシステムの安定稼働です。しかし、従来のシグネチャ型エンドポイント対策では高度化するランサムウェア攻撃などへの不安があり、週次スキャンによるPC負荷も課題となっていました。そこで同社は、東京エレクトロンデバイスの支援のもと、少人数でも運用しやすい自律型EDRとしてSentinelOneを導入し、本社と6支社の約200台のPCへ展開。重要な社会インフラを支えるセキュリティ基盤の強化を実現しています。
1963年に福島県初の民間テレビ局として開局した福島テレビ。「県民のニーズにこたえる情報発信基地」として、自社制作の報道・情報番組のほか、天気予報や防災情報の発信に力を入れています。特に防災面では県内、複数の自治体と防災協定を結び、地震、津波、火災など災害発生時の情報発信基地としての役割も担っています。
また、近年は地上波放送だけでなく、動画コンテンツやスポーツ・文化、音楽イベントなどを通じて、県内全域を盛り上げようと日々奮闘しています。
そんな同社にとって、営業支援から番組企画、編成、放送設備の管理、会計、人事など、さまざまな業務を支えるシステムの安定稼働は、BCP(事業継続計画)の根幹となっています。その観点から、情報セキュリティの強化が不可欠です。
しかし、これまでの対策は十分とは言えませんでした。同社 技術局 放送技術部(システム担当)主任の土屋航輔氏は、このように振り返ります。
「社内で稼働している約200台のPCにエンドポイントセキュリティ製品を導入していましたが、それらはシグネチャマッチングによる脅威検知をベースとしたものであり、昨今増加しているランサムウェア被害など、ますます高度化・悪質化するサイバー攻撃に対応しきれないという不安がありました。また、週1回実行されるセキュリティスキャンは、約1時間にわたってPCの動作速度を低下させる場合もあり、業務現場のユーザーに重い負担と不便を強いていました」(土屋氏)
実際、巧妙な手段で攻撃を仕掛けてくるサイバー脅威を100%防ぐのは不可能に近く、侵入されることを前提としたセキュリティ対策が重要度を高めています。
そこで同社が注目したのが、エンドポイントに侵入しようとする不審な動きを監視・検出する「振る舞い検知」から、「対応」「復旧」までカバーするEDR(Endpoint Detection and Response)です。ただし、その導入にも大きなハードルがありました。
「複数の製品を調査しましたが、ほとんどのEDRはSOC(Security Operation Center)のような専門家組織が主体となって運用することを前提に設計されており、ごく少人数でシステム運用管理を担っている当社にとって、現実的な選択肢にはなりませんでした。また、既存のセキュリティ対策から予算を上積みすることはできない、コスト面の制約からもSOC利用を前提としたフルスペックのEDR導入は困難で、あきらめかけていました」(土屋氏)
そうした中、東京エレクトロンデバイスから寄せられたのが「SentinelOne」です。「自律型」をコンセプトとするこのEDRに、同社は強い関心を持ちました。
「私自身もセキュリティの専門家ではないため、複雑なログ解析などの高度な調査を内製で行うのは困難です。したがって管理画面がわかりやすく、いま何が起こっているのか、その事象の何が問題なのかを直感的に把握できることが重要でした。まさに、この要件を満たしていたのがSentinelOneだったのです」(土屋氏)
そして、2024年12月中の1か月間にわたるPoC(概念実証)を経て、同社は2025年1月にSentinelOneの正式導入を決定しました。
「まずは各部署のPCにSentinelOneを1台ずつ適用し、既存の業務ソフトが問題なく動作するかどうかを重点的に検証しました。社内では放送局特有のアプリも多数運用しているため、誤検知なく正常に動作することが不可欠だったのです。この結果、運用上でまったく問題がないことを確認でき、導入に踏み切りました」(土屋氏)
その後、同社は本社および6カ所の支社(東京、大阪、仙台、郡山、会津若松、いわき)の計7拠点に分散する、約200台のすべてのPCにSentinelOneを展開。2025年4月1日より本番運用を開始しました。
この全社展開の過程では、さまざまな技術的な問題に直面しました。しかし、そうした困難も、東京エレクトロンデバイスとの連携により、無事に乗り切ることができました。
「たとえば、一部のPCがSentinelOneの管理ポータル上で認識されなかった問題に対して、東京エレクトロンデバイスは当該支社がアクセスするプロキシサーバーの設定に原因があることを突き止め、解決に導いてくれました。また、PoC段階からの質問対応など、的確かつ迅速なサポートにいつも助けられています。おかげで私たちは、内製でもしっかりセキュリティを運用していけるという手応えを得ることができました」(土屋氏)
こうしてSentinelOneの運用が軌道に乗ってから1年以上が経過した2026年7月現在まで、同社に重大なセキュリティインシデントは発生していません。
「サイバー攻撃に侵害されていないと確信したうえで、重要システムの運用にあたれるようになったのは、ここまでの取り組みの最大の成果です」(土屋氏)
加えてSentinelOneは、ユーザー側とセキュリティ管理側の双方の負荷軽減にも大きく寄与しています。
「毎週のセキュリティスキャンを行う必要がなくなったことで、各支社・各部署の業務に支障をきたすことは少なくなりました。一方で、私たちシステム運用担当者が対応しなければならないのは、基本的にSentinelOneがアラートを発報したときのみです。それ以外は、週に1回程度の頻度で管理ポータルを確認するだけで済んでいます」(土屋氏)
ただし、セキュリティ対策に終わりはありません。同社は今後に向けた課題として、社内の共有データの保護を挙げています。
「ランサムウェア攻撃では、NASやクラウドストレージなどに保存されたデータが被害に遭うケースもあるだけに対策を怠れません」(土屋氏)
加えて、将来的な管理が困難になることが懸念されるのが、社員による隠れたAI活用、いわゆる「シャドーAI」の拡大です。現時点では生成AIを利用した社員によるアプリ開発がそれほど広がっているわけではなく、問題が発覚したケースもありませんが、今後誰でも簡単にプログラムを作成できるようになると、知らず知らずのうちにセキュリティリスクに抵触してしまう恐れがあります。
「そのためにも、まずは社内教育を通じてセキュリティリテラシーの向上を図り、何が危険で、どんな点に注意すべきかを一人ひとりに理解してもらう必要があります。一方で生成AI利用に関するガイドラインを整備するなど、会社として利用を認める範囲を明確に示したうえで、ガバナンスを確保する仕組みづくりを進めていかなければなりません。東京エレクトロンデバイスからは、各ユーザーのPC上でシャドーAIを検知するSentinelOneのオプション機能の紹介も受けており、あわせて検討したいと考えています」(土屋氏)
これまで放送業界には、「放送網を支えているインフラやシステムは、外部から切り離されているため安全」と考えられがちな風潮がありましたが、今後はそのような前提に頼らず、セキュリティ強化を進めていこうとしています。
「システムがネットワーク境界の内側にあるから安全、分離されているから安全という考えから脱却し、何事も無条件に信頼しない『ゼロトラスト』の考え方に基づいた対策を確立していくことが不可欠です」と土屋氏は語り、引き続き東京エレクトロンデバイスとのパートナーシップを深めながら、重要な社会インフラの一角を担う放送事業者として、あるべきセキュリティ対策を追求していく構えです。
福島テレビは1963年(昭和38年)に福島県最初の民間テレビ局として開局し、「県民のニーズにこたえる情報発信基地」として活動を続けています。自社制作番組の「テレポートプラス」や「サタふくプラス」は、地域の情報を幅広く・わかりやすく伝える番組として視聴者から高い評価を受けています。愛称は「福テレ」、ローカルメディアだからこそできる地域密着型をいかし、地上波放送だけでなく、動画コンテンツやスポーツ・文化、音楽イベント「LIVE AZUMA」等で福島を盛り上げています。また、2011年の東日本大震災や2019年の東日本台風の教訓をいかし、防災報道にも力を入れ、県内の自治体と防災情報協定を結ぶなど、全国に先駆けた取り組みもしています。
記事は 2026年09月 取材・掲載のものです。