雑記セキュリティネットワーク

F5 rSeries上で動作する F5OS 品質レビューとRMA工場視察レポート

昨年に続き、F5, Inc.(以下、F5)の品質部門と工場視察を実施しました。今年は Spokane のF5オフィスで品質レビューを行い、RMA対応の拠点である Sacramento のShyft社も訪問!
F5OS の品質向上に向けたディスカッションを行い、F5 rSeries の修理プロセスが実際に行われる現場も見学させていただきました。そこで得られた多くの学びを今回のレポートでご紹介します!

はじめに

本ブログの関連記事として、F5の製造委託先であるFlextronics社のメキシコ工場を昨年訪問したときの様子をご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

F5 BIG-IP 新筐体 rSeries – 品質レビューと工場視察レポート

前回もお伝えしましたが、当社は1999年よりF5の代理店としてBIG-IPを中心に販売を続けており、昨年リリースされた「rSeries」についても、すでに多くのお客様にご利用いただいております。その一環として、rSeries上で動作するF5OSの品質レビューを実施し、RMA*1対応の拠点であるShyft社を訪問しました。

<Shyft社について>

<工場視察>

今回視察した修理工場も、昨年訪問した製造工場と同様に各プロセスが明確にフェーズごとに分かれていました。ただ、RMA対応ならではの特徴として、多様な状態や使用履歴を持つパーツに対応し、それを蘇らせる高度な専門技術を目の当たりにしました。製造ラインでは、常に決まった工程をいかに効率よく回して製品を作り上げるかに特化していましたが、修理のラインでは、毎回同じ障害とは限らないため、人による確認の重要性が高いことが印象的でした。それでも各フェーズごとの試験工程は高度に自動化されており、柔軟性と効率性を見事に両立させていました。これらの取り組みから、修理工場が持つ独自の価値と重要性を改めて実感しました。

修理ラインの見学に加え、修理TAT*2の目標値やRMA修理品の充当状況、さらには毎月の修理品出荷状況やNTF*3の詳細など、具体的な数値を交えた説明をいただきました。これにより、修理工程の運用規模や効率性について、より具体的にイメージを掴むことができました。
こうした透明性のある情報提供は、品質管理の現場への信頼感をさらに高めるとともに、今後のパートナーシップへの取り組みが強化されました。

<品質会議>

当社では、昨年同様にDOA*4やRMA代品のTAT状況の確認に加え、rSeries上で動作するF5OSの機能改善リクエストを実施しています。F5OSは、rSeriesから採用されたKubernetesベースの新しいOSで、その上でBIG-IPのOSが動作する構造となっています。このアーキテクチャの変更により、単一の筐体内で複数の独立したBIG-IPを動作させるマルチテナント機能が実現され、高性能なFPGA*5とCPUを搭載することで、rSeriesならではの卓越したパフォーマンスを発揮しています。

また、多くのお客様にrSeriesをご利用いただいているおかげで、F5OSについての知見も社内に多く蓄積されてきました。私はお客様からのお問い合わせ対応窓口のマネージャーを務めており、F5の職場文化に沿って緊密に協力しています。

F5ではすべてのことにおいて人間を第一にするという共通のコミットメントであるBeF5を定義しています。「BeF5」の詳細については、リンク先をご確認ください。

First and foremost, we do the right thing. 
– 顧客のニーズに答える(継続的な改善とバリューの創造)
– 主体的な活動(リスクを最小化、OneF5として活動を推進)
– 素早い対応(データによる意思決定および活動、従業員への教育)

加えて、ソフトウェア品質への取り組みについて詳細な説明をいただきました。ソフトウェア品質は大きく3つの視点、”Customer Experience“、”Development Process“、”Testing” に分類され、それぞれの要素が緻密に管理されています。


1. Customer Experience

お客様が製品を使用する際の体験を重視し、機能に対する要求との差異をプロジェクトマネージャーやアーキテクトが分析。また、EHF(重要な修正)の提供や、実際の使用感を反映させるプロセスが導入されています。これにより、顧客目線での製品改善が進められています。

2. Development Process
すべてのソースコード変更は相互レビューが行われ、開発部門はSDLC*6の定義に従って運用されています。また、セキュリティ面ではSAST/DAST*7を活用し、脆弱性の影響調査やSoftwareBOM*8を活用したCVE(一般的な脆弱性情報)の管理を徹底。これらのプロセスにより、開発工程の透明性と信頼性が確保されています。

3. Testing
テスト工程では、未テスト部分の原因を分析し、改善に活用。すべてのメジャーリリースとブランチリリースに対して回帰テストが実行されるほか、システム結合試験、性能試験、ソリューション試験、SR(サービスリクエスト)対応も実施されます。さらに、顧客の特定の設定条件を反映したテストも行うなど、品質保証に対する徹底した姿勢が感じられます。

これらの取り組みを通じて、F5は厳格な品質管理を保証しながら、一貫して高品質のサービスを提供しています。その献身的な姿勢が、当社とのパートナーシップをさらに強化し、業界トップクラスのソリューションをお客様にお届けする基盤となっています。

<感想>

昨年に引き続き、今回の工場視察でもアメリカならではの温かい文化に触れることができました。Flextronics社の時と同じように、握手から始まる挨拶がとても印象的で、自分の仕事に誇りを持って、熱心に説明してくださる姿勢にとても刺激を受けました。現地の方々と直接対話をする中で、私からのフィードバックにも親身になって耳を傾けていただき、すでにいくつかのポイントが修正されていることに驚きと感謝を感じています。

さらに、工場視察と品質レビューを通じて、TEDもしっかりと追いついていかなくてはと改めて感じました。今のrSeriesではF5OSの上で次期OS「BIG-IP Next」が動作する予定になっており、これによりさらに高い品質を実現できることを期待しています。F5とともに、より良い製品をお客様に届けるために努力を続けていきたいと思います。もしF5製品や今後の展開にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

これからも皆様のご意見をしっかり受け止めながら、F5やShyft社との連携を深めて品質向上に取り組んでいきますので、私たちと一緒に次のステージに向けたソリューションを形にしていきましょう!

<おまけ ~Spokane~ >

【用語解説】★で本文に戻れます
*1 RMA:Return Merchandise Authorization。故障品返却メーカー対応
*2 TAT:Turn Around Time。修理までにかかる時間
*3 NTF:No Trouble Found。故障品返却後、テストで問題が発見されなかった状態
*4 DOA:Dead on Arrival。メーカー納品時初期不良対応
*5 FPGA:Field-Programmable Gate Array。ユーザーがプログラム可能な集積回路
*6 SDLC:Software Development Life Cycle。ソフトウェア開発の一連のプロセス
*7 SAST/DAST:Static/Dynamic Application Security Testing。アプリケーションの静的/動的セキュリティテスト
*8 SoftwareBOM:Software Bill of Materials。ライブラリやコンポーネントの依存関係を一覧化したもの

この記事に関連する製品・サービス

この記事に関連する記事