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【前編】IaCの標準化を支えるTerraform Stacks:概要と活用法を解説

HashiConf 2024で発表されたTerraform Stacksは、従来のTerraformワークフローに新たな概念を取り入れています。この機能は、Terraformモジュールの上に新しい構成レイヤーを追加し、複数のモジュールをより大規模なプロビジョニングで効率的に管理できるよう設計されています。本記事では、Terraform Stacksの基本的な考え方とその活用方法について解説します。

Terraform Stacksの概要

Terraform Stacksは、複雑なインフラ環境の管理をシンプルかつ効率的に行うための新しいアプローチです。従来のTerraformワークフローで課題となっていた依存関係の管理やモジュールのスケーリングに対し、より直感的で再現性の高い管理を実現します。この機能により、開発チームや運用チームがインフラの標準化や自動化をさらに進めやすくなり、プロジェクト全体のスピードと品質が向上する効果があります。以下に、具体的なメリットをいくつかご紹介します。

  1. 管理の簡素化
    スタック内で複数のモジュールをコンポーネントとしてまとめることで、各モジュール間の依存関係を明確化し、Terraformがその管理を自動化します。これにより、依存関係を手動で追跡・管理する手間を大幅に削減できます。
  2. 生産性の向上
    共通のインフラセットアップを複数の環境や地理的ロケーションにおいて、一度の操作で容易に展開できます。さらに、実行プランの承認の有無を設定できデリバリーを高速化できます。例えば、開発環境ではリソースを削除しない実行プランを自動承認するといったワークフローを作成できます。
  3. 拡張性の向上
    既存のTerraformモジュールの再利用性をそのまま活用しつつ、複数のモジュールをまとめて管理できる仕組みを提供することで、インフラ管理をさらに効率化・スケールアップできます。

※Terraform Stacksは2024年12月の時点でパブリックベータで提供されています。

Terraform Stacksの構成

Terraform Stacksは、以下の主要な要素で構成されています。

構成要素 説明
Components 複数のTerraformモジュールをテクノロジーレイヤー単位で分割し、依存関係を管理。
Deployments 複数の環境やロケーションを定義し、共通のインフラを一括で展開する。
Orchestration rule 自動承認やデプロイの自動化を設定する。
Deferred Change 情報不足の場合に変更を後回しにし、後で再適用する機能。 

Terraform Stacksのユースケース

主なユースケースについて説明します。

  1. アプリケーション全体を複数の環境で単一ユニットとしてデプロイ
    ネットワーク、ストレージ、仮想マシンといったアプリケーションの構成要素を単一ユニットとしてデプロイできます。例えば、開発チームが新しいアプリケーション環境を利用したい場合、高度なTerraformの知識がなくても、1回の操作で開発やステージングなど複数の環境にインフラを容易に展開できます。

  2.  複数のリージョン、可用性ゾーン、クラウドプロバイダーへの展開
    例えば日本、北米、ヨーロッパなど、グローバルに分散したリージョンで同じインフラを展開する場合、一度の設定で全リージョンに統一された構成をデプロイできます。変更が必要になった際も、全リージョンに一括で適用できるため、管理の効率が大幅に向上します。

  3. Kubernetesワークロードのプロビジョニングと管理
    Kubernetes環境の管理には予測できない要素が多く、従来のTerraform構成では実行計画が複雑化しやすい課題がありました。Terraform Stacksはこの課題を解決し、Kubernetesクラスタ全体を単一のユニットとして管理できるようにします。これにより、複数の独立したTerraform構成を個別に管理する必要がなくなり、スケーラブルな展開が可能になります。例えば、マイクロサービスをKubernetes上にデプロイする際、クラスタのセットアップ、ネームスペースの設定、ネットワーク構成、ストレージのプロビジョニングをすべて1回の操作で完了できます。この効率性により、デプロイ時間が短縮され、大規模なKubernetes環境の運用をスムーズに進められます。

引用元: https://learn.microsoft.com/en-us/azure/aks/operator-best-practices-cluster-isolation

 

次回はTerraform Stacksの活用方法をサンプルコードを使って解説します。

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