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セキュリティ運用が変わる!F5 XCのAIアシスタント機能を使ってみた

マルチクラウド環境のセキュリティ対応を助けるF5 Distributed Cloud Services(F5 XC)の AIアシスタント機能。実際の使用感とともに、これからのセキュリティ管理の新たな可能性を探ります。

はじめに

 近年、マルチクラウド環境におけるセキュリティ運用は、高度化と複雑化の一途をたどっています。日々巧妙化する攻撃手法や膨大なアラートへの対応は、人的リソースに大きな負担を与え、迅速かつ精緻な判断が求められる場面が増えています。特に、WAF(Web Application Firewall)やWAAP(Web Application and API Protection)を運用する現場では、正規トラフィックと攻撃トラフィックの判別、ポリシーのチューニング、誤検知の対応など、多岐にわたる高度な運用スキルが必要です。

こうした背景から、セキュリティ分野でもAIの活用が加速しており、トラフィックの学習や異常検知にML/AI技術を組み込む事例が増えています。その流れの中で、F5 Distributed Cloud Services(F5 XC) に新たに追加された「 AIアシスタント機能 」 は、これまでの運用をさらに効率的かつ高度にする新たな選択肢となります。生成AIを活用し、対話形式でセキュリティイベントログの分析や運用支援を行うこの機能は、セキュリティオペレーションの効率化と高度化を同時に実現する可能性を秘めています。

本記事では、F5 XCの AIアシスタント機能 を実際に試し、その使用感や具体的な活用シーンをご紹介します。

*右側に表示されているのが AIアシスト機能のコンソール

 

F5 XCの AIアシスタント とは?

F5 XCのAIアシスタント機能は、コンソール上に統合された自然言語ベースのインターフェースです。主に以下のような機能を提供しています。

  • セキュリティイベントログの要約表示や重要なWAFイベントなどの攻撃ログをAIが要約して提示してくれるため、内容を短時間で把握可能です。 (ブラウザの機能で英語を日本語に変換した画像です)

 

  • 自然言語でのクエリ検索 「 過去 24 時間の WAF セキュリティイベントを含むリクエストを表示して 」といった曖昧な質問にもAIが応答し、必要なログ情報を抽出してくれます。

 

  • ナレッジベースとの連携 攻撃タイプに関する追加情報や関連ドキュメントを自動で提示し、オペレーターの知識補完にも役立ちます。 以下は提案の一部です。特定の情報の確認方法や基本的なGUIの操作方法なども提示してくれます。

 

これらの機能を、GUIのチャットボックスまたはテキストベースで利用することができ、複雑なUIの操作やクエリ記述の知識がなくても対応できるのが大きな特徴です。

実際に使ってみた感想

 試したのは、あるテスト環境でF5 XC WAFに検知されたイベントに対して、AIアシスタントに質問を投げかけるというシナリオです。例えば以下のような問いかけをしてみました。

  • 「昨日最も多かった攻撃種別は?」
  • 「このアラートはどのようなリスクを持っているのか?」
  • 「この攻撃に対して追加の対策はあるか?」

これらの質問に対して、AIアシスタントは即座にログから必要な情報を抽出し、要約付きで提示してくれました。さらに、攻撃名に対するCVE情報やOWASP Top 10の該当カテゴリまで教えてくれたのは非常に便利でした。

また、過去のトラフィック傾向からの比較や、類似のインシデントとの関連も示してくれるため、「 気づかなかった傾向 」にも目を向けることができる点は運用上の大きな価値を感じました。

運用上のメリット

 実際に使ってみて感じた、AIアシスタントのメリットは以下の通りです。

  • 初動対応が早くなる イベント内容の要約や優先度の提示により、重要なアラートを見逃しにくくなります。
  • 知識がなくても使える 特定の攻撃手法や対策に詳しくなくても、AIが概要やリスクを説明してくれるため、ジュニアメンバーの支援にも適しています。
  • 運用ドキュメントとの連携が可能 回答の中にF5の公式ドキュメントやKBへのリンクが含まれており、詳細な調査にもスムーズに移行できます。

今後への期待

 今回のAIアシスタントは、いわゆる 「 会話型UI 」 にとどまらず、実運用にしっかりと活用できるレベルに進化している印象を受けました。今後、インシデントに対する 「 自動提案 」 だけでなく、ポリシー自動生成や、より深い外部連携(例:SIEM、SOARとの統合)が実現すれば、さらに活用の幅が広がりそうです。あとは日本語によるチャットができると日本人には使いやすさが向上すると思っています。

まとめ

F5 XCに搭載された “AIアシスタント機能” は、セキュリティ運用の現場における “新しい相棒” となり得る機能です。イベント分析のスピードアップ、ナレッジの補完、運用の属人性排除といった点で、利用価値は十分にあると感じました。

今後さらに高度化が進めば、セキュリティ運用のスタイルそのものを変える存在になっていくのではないでしょうか。

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