「もし攻撃者だったら?」──ランサムウェア時代に企業が持つべき“攻撃者視点”とは
ランサムウェア被害が止まらない今、必要なのは“守る対策”だけではなく“攻撃者視点”。どこから侵入され、侵入後に何をされるのか?実際の攻撃シナリオから企業が見落としがちな弱点と、その重要性をわかりやすく解説します。
「ランサムウェア対策」、これはここ数年間多くの企業で取り組まれていたセキュリティの1つかと思います。
しかし、2025年現在も日本国内でランサムウェア被害が後を絶ちません。
いまや業界を問わず「業務停止」「出荷遅延」「オンラインサービス停止」などの事例が相次ぎ、経営者・情報システム担当者の多くが「自社は大丈夫だろうか」という不安を抱えているかと思います。
こうした背景の中、いま企業に求められているのは、従来の「守りの発想」ではなく、
もし攻撃者だったら?という考え方で自社を見つめ直す“攻撃者視点” です。
ランサムウェア攻撃は「準備」された攻撃
近年の攻撃者は時間をかけて、
- 侵入しやすい入口を探り
- 社内ネットワーク内で動ける場所を見つけ
- 最も大きな被害を出せるポイントを特定して
- そこで初めて暗号化・情報窃取を行う
という“段階的な攻撃プロセス”を取っています。
つまり、攻撃は入口(侵入経路)と内部(侵害後の展開)のセットで成り立っています。
一般的な対策だけではカバーしきれない現実
一般的に必要と言われているバックアップ、脆弱性対策、社員教育、アクセス制御…、どれも必要であり重要です。
しかし、それだけでは守り切れないケースが増えてきています。
- 「入口対策はしていたが、別の経路から侵入された」
- 「内部の横移動を許してしまい、小さな侵入が大きな被害につながった」
- 「予想外のシステムが“攻撃の踏み台”にされた」
こうした事例が増えているのは、
“攻撃者目線でのシナリオ”が十分に検証されていない
ことが大きな理由です。
第1の視点:「もし自社を攻撃するなら、どこから侵入するか?」
この問いは、多くの企業が想像しやすい攻撃者視点です。
- 外部に公開しているサービス
- リモートアクセス環境
- VPN やクラウドの設定
- 外部委託先とのデータ連携
- パッチが遅れがちな古いサーバー
どれも攻撃者にとっては“侵入の候補”。
そして、その候補は企業が思っている以上に多いものです。
第2の視点:「もし内部に入れたら、どこまで攻撃できるか?」
攻撃者は“入口を突破した瞬間”に目的を達成するわけではありません。
むしろ、本当の攻撃はそこから始まります。
入口を突破し内部に侵入した後に、攻撃者は次のように行動します。
- どの端末やサーバーに移動できるか
- どのアカウントを奪えば権限が広がるか
- どのシステムを止めれば企業は痛手を受けるか
- どのデータを盗めば身代金を払わざるを得ないか
つまり企業が考えるべきは、
「侵入されたらアウト」ではなく、「侵入されても被害を最小化できるか」
という視点です。
※もちろん侵入前に防げることが理想的ではありますが…
そして、この内部の攻撃シナリオは、企業の業務構造・権限設計・ネットワーク設計によって変わります。
だからこそ “内部で何ができてしまうのか”を事前に把握することが極めて重要 なのです。
攻撃者視点がないと、セキュリティ投資は最適化されない
現在、多くの企業がセキュリティ対策を「足し算」で続けているかと思います。
- 新しいツールを買う
- 次の監視サービスを入れる
- さらに高性能な防御製品を追加する
しかし、攻撃者視点で自社の弱点を可視化できていなければ、
何を重点的に守るべきか、どこに手を打って行くべきかがわからず、投資効果が最大になりません。
攻撃者視点とは、
「攻撃の起点」と「被害が最大化するポイント」を理解すること。
これができて初めて、本当に意味のあるセキュリティ対策が可能になります。
まとめ—— ランサムウェア対策の最重要テーマは“攻撃者の行動を再現し、弱点を見つけること”
今回のブログでは、
- どこから侵入されるか
- 内部に入られたら何をされるか
この2つの視点が重
要であることを解説しました。
しかし、守る側の立場から「攻撃者視点」を持つことはなかなか難しいですし、「攻撃者の行動を再現」することはさらに難しいことです。
そこで次回のブログでは、
この「攻撃者の行動」を実際に企業内で再現し、弱点を可視化する仕組みについて紹介したいと思います。
「攻撃者目線で弱点を見つけることが重要なのはわかった。でも、実際どう自社で検証すればいいのか?」
そう感じられた方に、有効な答えとなる内容を予定しております。
次回をぜひ楽しみにしてください。
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