セキュリティ

フロンティアAI時代のセキュリティ対策とは【第1弾】
~金融庁の要請から読み解く脅威変化と必要な考え方~

金融庁が2026年5月に公表した「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」も踏まえ、AIによって何が変わり、何が変わらないのかを整理します。そのうえで、CVSSでは見分けにくい「本当に悪用できる脆弱性」と「重要資産へつながる攻撃経路」を実証する考え方として、AEVというカテゴリについても解説します。

はじめに

Claude Mythosが登場した2026年4月以降、フロンティアAI*¹ モデルにおけるサイバー能力の向上、またそれに伴う脅威に関する関心・危機感が高まっております。

本ブログでは、金融庁が2026年5月に公表した「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」の内容も踏まえ、フロンティアAIによって何が変わるのか、どのようなセキュリティの考え方・対応が必要となるのかを解説します。

文書内では、フロンティアAIによる変化を、①従来は発見困難だった脆弱性の短期間・大量発見、②脆弱性発見から攻撃までの期間短縮、③スキルの低い攻撃者による高度な攻撃の増加、という3点で示されております。

一方、攻撃の基本構造は変わらないため、防御側にとっては、脆弱性の件数を追うのではなく、自社環境で悪用される脆弱性、成立する攻撃経路を見極めることが重要となっております。

■関連ページ金融庁:「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」に係る要請について https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260522-5/01.pdf

フロンティアAIによって、何が変わるのか

1.脆弱性が、短期間で大量に発見される

フロンティアAIは、大量のソースコードや設定情報を読み、脆弱性につながるパターンを探索する作業を効率化します。
これまで専門家が時間をかけても発見しにくかった脆弱性が、短期間に多数見つかる可能性があります。

防御側にとって厄介なのは、修正候補が一気に増える一方、人員やシステムを停止できる時間は増えないことです。
そのため、脆弱性情報を集めて一覧化し、深刻度の高い順に対処する運用では、対応しきれなくなってしまいます。

2.発見から攻撃までの期間が短縮する

脆弱性を見つけることと、実際に侵害へ使うことの間には、従来、解析、攻撃コードの作成、複数の弱点をつなぐ攻撃チェーンの構築といった工程がありました。
AIはコード生成や試行錯誤を支援し、攻撃者は公開情報から対象を探し、攻撃コードを調整し、認証情報や設定不備を組み合わせるまでを、従来より短い時間で進められるようになります。

3.スキルの低い攻撃者でも、高度な攻撃を実行しやすくなる

これまで高度な攻撃には、脆弱性やネットワーク、権限、攻撃ツールに関する知識が必要でした。
フロンティアAIは、攻撃手法の検討、コード作成、エラー修正、次に試す操作の選択を支援し、経験の浅い攻撃者でも従来より複雑な攻撃を実行しやすくします。

一方で、攻撃の基本的な手法は変わらない

AIは、偵察、脆弱性探索、攻撃コードの作成などを効率化・高度化しますが、従来の攻撃手法を全く新しいものに変えるわけではありません。

外部公開資産や人を起点に侵入し、脆弱性や認証情報、設定不備を利用して権限を上げ、組織内部を横展開し、重要なデータやシステムへ到達する――この基本的な構造は変わりません。

基本的な構造は変わらないからこそ、脆弱性、ID、権限、設定などのつながりを攻撃者の視点で確かめ、成立する経路を継続的に塞ぐことが有効になります。

これからのセキュリティの考え方は、どう変えていくべきか

ここまで見てきたフロンティアAIによって変わること、変わらないことをもとにこれからのセキュリティの考え方はどう変えていくべきなのかについてお話します。

AIによって修正候補が増えるほど、すべてを同じ速度で直すことは難しくなります。

そこで、脆弱性そのものの深刻度(CVSS*²)だけで対応を決めるのではなく、自社環境で悪用される可能性、成立する攻撃、その影響度も踏まえた対策の優先順位付けが重要となります。

CVSSは、脆弱性自体の深刻度の共通尺度として重要な判断材料です。
しかし、その脆弱性を悪用された結果、自社内に存在する認証情報や過剰権限、設定不備と連鎖するか、既存対策で阻止できるか、重要業務へ到達するかまでは、CVSSだけでは判断できません。

金融庁の文書内でも以下のように述べられております。

 

”多くの金融機関等では共通脆弱性評価指標(CVSS)スコアや攻撃コードの有無 等に基づきパッチ適用の優先順位を決定していると考えられるが、CVSSスコア が高くない脆弱性であっても実際の攻撃に利用されている実態があり、こうした 傾向は、フロンティアAIにより、今後さらに加速することも想定される。”

”金融機関等においては、発見された脆弱性が自組織のサービス/IT システムに及ぼし得る影響を適切に把握するとともに、攻撃が成立する蓋然性も 踏まえた評価を行うことが重要である。その上で、リスクベースで優先順位付け を行い、よりリスクの高い脆弱性から迅速かつ着実に対応すべきである。”

引用元:金融庁:「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」に係る要請について https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260522-5/01.pdf

「脆弱性の悪用可能性」「攻撃経路」を可視化するAEV

それでは、CVSSだけでは見分けにくい「本当に悪用できる脆弱性」「重要な攻撃経路」をどう実証するのでしょうか。
そのカギとなるのが「AEV(Adversarial Exposure Validation)」です。

AEVとは

AEV(Adversarial Exposure Validation)は、日本語では「攻撃者視点のエクスポージャー検証」と表現できます。

各単語を分解すると、

  • Adversarial:攻撃者の視点で
  • Exposure:攻撃者に悪用され、侵入・横展開・権限昇格・重要資産への到達につながり得る弱点や状態
  • Validation:そのExposureが理論上存在するだけでなく、実際の環境で本当に悪用可能かを証拠付きで確認する

AEVは、攻撃者の行動を再現し、組織が抱える脆弱性などの弱点が本当に悪用可能か、悪用した先に横展開や権限昇格、重要資産への到達といった一連の攻撃が成立するかどうかを検証し、組織にとって本当に危険な(優先的に対応すべき)リスクを明らかにします。

脆弱性スキャンとの違い

一般的な脆弱性スキャンは、CVE、製品バージョン、シグネチャ、設定情報を照合し、「弱点の候補」を幅広く発見することに強みがあります。一方、AEVは発見された弱点を使って、侵入、権限昇格、横展開、重要資産への到達という攻撃の流れが成立するかを確かめます。

次回のブログでは、このAEVを実践する「Pentera」という製品についてご紹介いたします。

まとめ

フロンティアAIが変えるのは、脆弱性の探索能力、攻撃へ転換する速度、攻撃者に必要なスキルの水準です。
一方、侵入、権限昇格、横展開を経て重要資産へ到達する攻撃の基本構造は変わりません。
そこで必要となる考え方は、自社で悪用される脆弱性や成立する攻撃、それによる影響を見極め、重要な経路から対処していくことです。

AEVは、CVSSでは判断しにくい「本当に悪用できる脆弱性」と「重要資産へつながる攻撃経路」を実証し、優先的に対処すべきセキュリティリスクを明らかにすることができます。

では、このAEVは具体的にどのように実現することができるのでしょうか。
続く第2弾のブログでは、攻撃者視点の検証を自動化するPenteraの仕組みと、金融機関にとって重要な「リスクベース」の対応をどのように実現するのかを解説します。

 

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