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2019年のIT業界展望――ソフトはマイクロサービスに注目、ハードはNVMe SSDが普及の兆し

2019年、ソフトウェア面ではクラウドネイティブ化がさらに浸透し、その過程でサービスメッシュへの注目が高まりそうだ。一方、ハードウェアではインテルがついに不揮発性のメインメモリを発売する。

IT業界はここ数年、いくつもの技術的変化を遂げてきました。プロセッサでは長く続いてきたCPUの微細化とクロックの向上による性能向上が足踏み状態となった結果、CPUのマルチコア化に加えてGPUやAI向けチップ、FPGAといったアーキテクチャの多様化が始まりました。またストレージにおけるハードディスクドライブからSSDへの進化は、二次記憶装置における革新的な出来事と言っていいでしょう。

インフラの面でもクラウドが普及し、仮想化からクラウドネイティブなコンテナへと新しいソフトウェア基板が普及し始めました。そしてデータ構造とアルゴリズム構築が中心だったソフトウェア開発においても、機械学習やAIの登場によってそのあり方が大きく変わろうとしています。

そうした大きなトレンドのなか、2019年はどのような技術が注目される年になるのでしょうか。ここでは、その予測を行ってみましょう。

さらに進むマイクロサービスの普及

本連載2018年1月の公開記事『コンテナオーケストレーションツールの“事実上の標準”という座をつかんだ「Kubernetes」。その重要性とは?』で書いたように、2018年はマイクロサービスを実現する基盤として「コンテナ」と「Kubernetes」の2つの技術が注目され、浸透した年でした。

ソフトウェアを役割ごとに複数のサービスに分割し、それぞれを連携させることでシステムを構築するマイクロサービスは、スケーラブルかつ急速に進化し続けるクラウド時代のソフトウェア構造として知られるようになりました。

マイクロサービスに実際に取り組んでいるのは、オンラインサービスを本業としているスタートアップ企業や先進的な企業の一部に止まっているのが現状です。しかしマイクロサービスはクラウドに適したアーキテクチャであることから、今後もクラウドの浸透につれてその普及はさらに進むと考えられます。

サービスメッシュと開発環境の進化

2019年は、このマイクロサービスにおいて2つの事柄が注目されると予想しています。

1つは本連載2018年10月の公開記事『Docker、Kubernetesに続く今後の注目コンテナテクノロジー「Istioとサービスメッシュ」とは?』で書いたサービスメッシュです。

アプリケーションをマイクロサービスとして開発していくと、クラウド上に多数のサービスがズラリと並ぶことになります。そうなると、このサービス間のトラフィック管理をどうするか、特定のサービスをどうやってアップデートするか、全体のログをどうやって収集するかといった課題が浮かび上がってきます。

サービスメッシュはこうした課題を解決する機能を提供するものです。2019年はマイクロサービスが普及していき、サービスメッシュの重要性が認識されるようになるでしょう。

「Istio」はコンテナのうえで稼働する個々のサービスレベルに対して、マイクロサービスアーキテクチャ実現のための機能を提供

すでにGoogleは「Google Kubernetes Engine」でサービスメッシュを提供する代表的なソフトウェアである「Istio」のサービス提供を始めたこともあり

Kubernetesに注目が集まった2018年と同様、2019年は「Istio」への注目が高まっていくはずです。


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そしてもう1つ、こうしたマイクロサービスを採用したアプリケーションの開発環境自体も進化していくはずです。これはGitHubなどを用いたソースコード管理、ビルドとテスト、デプロイまでを含めたパイプラインの自動化が実現することを指し、いわゆる継続的統合/継続的デリバリ(CI/CD)の実現と呼ばれるものです。

マイクロサービスの開発にはアーキテクチャの変化だけでなく、こうした開発環境の進化と充実も伴うことになるでしょう。

最近では、このオペレーションをGit/GitHubを用いたソースコード管理ワークフローの拡張で実現する「GitOps」への注目も高まっています。ソースコードに加えてクラスタ状態やアプリケーションのデプロイ状態など、インフラを含めたあらゆる状態をコードとしてGit/GitHubで管理し、Git/GitHubのワークフローを用いて開発からビルド、テスト、運用までをカバーしていくものです。

マイクロサービスによるアプリケーションアーキテクチャだけでなく、開発環境、運用まで含めてクラウドに最適化された、広い意味での“クラウドネイティブ”という方向性が、2019年はますます注目されることでしょう。

不揮発性メインメモリとNVMe SSDの本格化

ハードウェアの面では2つのトピックを挙げておきましょう。

1つは、ついにインテルが不揮発性のメインメモリとして「Optane DC persistent memory」の一般販売を開始する見通しです。

ついに一般販売が開始されるインテルの不揮発性メインメモリ「Optane DC persistent memory」

Optane DC persistent memory

コンピュータのメインメモリは電源が切れるとデータが失われるDRAMが一般的です。電源が切れてもデータを失わないようにするには、データの内容を必ず二次記憶装置としてのストレージに保存することが必要でした。これは現代のコンピュータの基本的な構造でした。

この現代のコンピュータの基本的な構造を一新する可能性を持つのが、不揮発性メインメモリなのです。

これまでも不揮発性メモリをメインメモリに用いる試みはありましたし、今回のOptane DC persistent memoryもメインメモリをすべて置き換えるような製品ではありません。しかし、サーバー市場を圧倒的に支配しているインテルが製品として不揮発性メインメモリの提供を始めるということは、歴史的に見ても大きな出来事ではないかと思います。

コンピュータのメインメモリの主流が不揮発性になる可能性は高いと考えられています。2019年はそれが始まった最初の年として、深く記憶されることになるのではないでしょうか。

そしてもう1つのトピックは、NVMe SSDストレージが本格的な普及の兆しを見せ始めたことです。


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本連載2016年7月の公開記事『普及期を迎えたフラッシュストレージの「現在と将来像」』で紹介したように、NVMeはSSDのような不揮発性メモリの性能を最大限に活かすためにPCIeをベースに作られたストレージインターフェイスです。

2018年、大手ストレージベンダーの多くが自社のメインストリームに位置するストレージアレイ製品群でこのNVMe対応を済ませました。2019年はこれらが本格的に利用される段階に入るでしょう。

とくに現在は、サーバーにおけるプロセッサの進化がかなり緩やかであり、サーバーへ投資するよりもストレージ、なかでも古いストレージを最新のNVMe SSDへとリプレイスする投資の方がシステム全体の性能向上に圧倒的に寄与します。

さらにNVMeは、その高速なI/O性能、すなわち小さなレイテンシと高い帯域幅を持つため、ストレージの媒体として現在使われているNAND型フラッシュメモリよりも高速で、 Optane DC persistent memoryに使われている3D XPointの性能も発揮できる領域へと達しています。

将来的にはストレージの筐体はそのままに内部のストレージ媒体のみを入れ替えることで、さらに高速なストレージへのアップグレードパスを、多くのストレージベンダーが提供するはずです。

一昨年および昨年と、サーバーの分野ではハイパーコンバージドインフラがメインストリームへと浸透していく時期でしたが、2019年はこれに加えてNVMe SSDも、サーバーほど派手な宣伝やマーケティングが行われるわけではありませんが、同じくサーバーのメインストリームへと入り込んでいくのではないでしょうか。

※本記事は東京エレクトロンデバイスが提供する不定期連載のタイアップコラムです。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

※このコラムは不定期連載です。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

新野淳一

新野淳一Junichi Niino

ブログメディア「Publickey」( http://www.publickey1.jp/ )運営者。IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。新しいオンラインメディアの可能性を追求。