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ARMサーバーはついに離陸するのか?――― HPEやAWSなど大手ベンダーに相次ぐ活発な動き

かつて盛り上がりを見せたものの下火になっていたARMサーバーが、最近になって再び、盛り上がりを見せている。ARMとは1990年11月に設立された英Advanced RISC Machines(ARM)社が開発・設計したプロセッサコアのアーキテクチャ。大手ベンダーが相次いで、このアーキテクチャに基づくARMプロセッサを搭載したARMサーバーの提供に乗り出したのだ。今回の盛り上がりは、果たして本物なのだろうか?

ARMプロセッサは組み込み機器やモバイルデバイスなどに幅広く使われているプロセッサです。大きな特長の1つが電力の効率的な使用にあり、性能に比べて低い消費電力とそれに伴う低発熱は、組み込み型やモバイルデバイスに適したものです。

そして、その電力効率の高さを武器に、ARMプロセッサを搭載したサーバーはこれまでに何度か、インテルのプロセッサが君臨するサーバー市場へ挑戦してきました。

というのも、データセンターにおいてはサーバーから発せられる大量の熱への対処が常に大きな課題であり、発熱の小さなARMサーバーはその解決策として魅力的に見えたためです。

例えば2011年に米ヒューレット・パッカードがプロジェクト「Moonshot」を発表。ARMプロセッサをベースに、低消費電力と低発熱を活かした高密度サーバーを実現するとしていました(その後、Atomベースの製品などが実際に登場しました)。

2012年には、今度はAMDが64ビットARMベースのサーバー向けプロセッサの開発計画を発表。こちらも高密度サーバーの実現をうたっていました。

AMDが2012年に発表した64ビットARMベースのサーバー向けプロセッサの開発計画

AMDが2012年に発表した64ビットARMベースのサーバー向けプロセッサの開発計画

しかし、こうした挑戦にもかかわらず、サーバー市場においてARMサーバーが大きな存在感を得ることはありませんでした。十分な性能を実現できなかったことが大きな要因として考えられます。

カビウム社によるARMプロセッサはシングルスレッド性能重視

2018年は、ARMサーバーへの挑戦が再び行われた年となりました。これまでARMサーバーの弱点だった性能を強化した製品が登場してきたのです。

そのきっかけは、米Cavium(カビウム)社がARMをベースとしたサーバー向け64ビットプロセッサ「ThunderX2」を発表したことです。ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は、このThnuderX2を採用したサーバー「HPE Apollo 70 System」を発売しました。

さらに、さくらインターネットの子会社であるプラナスソリューションズは、この「HPE Apollo 70 System」を採用した月額課金のホスティングサービスを開始すると発表しました。

これまでARMをベースとしたサーバー向けプロセッサは、ARMの特長である低消費電力と低発熱を活かした高密度サーバーを指向していました。しかし、カビウムのThunderX2プロセッサはARMをベースにしつつも、インテルのXeonを意識して64ビットプロセッサとして高いシングルスレッド性能の実現を目指して開発されたものであり、これまでのARMベースのサーバープロセッサとは位置づけを大きく変えてきました。

これはカビウムがARMから「アーキテクチュアルライセンス」という方式でライセンスを受けたことが影響しています。このライセンスの下で、カビウムはARMのバイナリ互換を保証するための大量のテストスイートをARMから受け取ったため、カビウムはARMとのバイナリ互換を保証しつつ、サーバー向けの高性能を備えたARMプロセッサを開発できたわけです。

ThunderX2プロセッサのベンチマークは公開されていませんが、いくつかのメディアでその性能が「Xeon Skylake」プロセッサに匹敵すると評価されています。

さらに1ソケットあたり最大32コアを搭載することで、メニーコアにおけるコストパフォーマンスが高いこと、8本のメモリチャネルはXeonよりも約3割大きいメモリバンド幅を持つため、メモリインテンシブな処理に強いとも評価されています。

AWSも独自にARMプロセッサを開発、サービスの投入へ

さらに2018年、ARMサーバーへの注目が集まる大きな出来事となったのが、AWSが独自のARMプロセッサ「AWS Graviton Processor」を開発し、それを搭載した「Amazon EC2 A1 インスタンス」を発表したことです。

ARMサーバーへの注目が集まる大きな出来事となったAWS独自のARMプロセッサ「AWS Graviton Processor」の発表

AWS独自のARMプロセッサ「AWS Graviton Processor」の発表

AWS Graviton ProcessorはAWSが2015年に買収したASICベンダーであるAnnapurna Labsが設計と製造を担当した、16コアの64ビットARMプロセッサです。

これを採用したAWSのA1インスタンスは、コンテナやマイクロサービスなどを対象としたスケールアウト処理に最適で、ワークロードあたり45%の低コストで利用できるとしています。

あえてAWSが戦略的な価格づけをしている可能性もありますが、それでもAWSが独自に開発したARMプロセッサの処理コストがインテルプロセッサの半額以下というのは、非常に大きなインパクトを持つのではないでしょうか。

さらに2019年1月、今度は中国のファーウェイ社が独自に設計・開発したARMベースのサーバー向けプロセッサ「Kunpeng 920」を発表しました。

2019年1月、中国のファーウェイ社も独自に設計・開発したARMベースのサーバー向けプロセッサ「Kunpeng 920」を発表へ

Kunpeng920は7nmスケールで製造され、2.6GHzで駆動するCPUコアを64個搭載し、ARMベースのサーバープロセッサとして「業界最高性能」と同社では自負しています。同時に、これを搭載するサーバー「TaiShan」シリーズも発表しました。

ARMだけではない新プロセッサの潮流

プロセッサにおける微細化に限界が見え始めた現在、あらゆる処理を1つのプロセッサ、現在においては事実上の業界標準であるインテルプロセッサで行うよりも、処理に合わせて適したプロセッサを使い分ける方が、より高速で効率的になります。

2018年におけるARMプロセッサへの再注目は、こうした潮流とサーバー向けARMプロセッサの進化などがうまくかみ合った結果だと考えられます。そして、この流れは今後さらに深まっていくはずです。

しかも、それはARMプロセッサにとどまりません。例えばオープンな命令セットとして多くの企業が集まって開発した「RISC-V」(リスクファイブ)も、新たなプロセッサのアーキテクチャとして注目を集め、製品化が進んでいます。

ストレージベンダーの米ウェスタンデジタル社は、これまでARMなどを採用していた自社のほぼすべての組み込み用プロセッサを、RISC-Vベースのプロセッサに置き換えていくことを表明しています。

2019年はサーバープロセッサにおけるインテル以外のアーキテクチャが、今度こそ本当に離陸できるかどうか、大いに注目される年となるでしょう。

※本記事は東京エレクトロンデバイスが提供する不定期連載のタイアップコラムです。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

※このコラムは不定期連載です。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

新野淳一

新野淳一Junichi Niino

ブログメディア「Publickey」( http://www.publickey1.jp/ )運営者。IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。新しいオンラインメディアの可能性を追求。