Cerebras CS-4を発表
みなさん、こんにちは
CerebrasプリセールスエンジニアのNakadaです。
先日、Cerebras社がQ2 2026決算を発表しました。コア売上高は前年比103%増の約2億ドルとなり、その中でもコアクラウド売上高は前年比287%増加の約1億ドルとクラウド事業が急拡大したというニュースがありました。そんな中行われたCerebrasの旗艦イベント「SUPERNOVA」で新ハードウェア Cerebras CS-4が発表されましたので本ブログでは、Cerebras Systemsの公式発表をもとに紹介します。
■Cerebras 第4世代システム
Cerebras社は、世界最大のAIチップであるWafer Scale Engineチップ(WSE)を搭載したAIアクセラレータ CS-3を販売していますが、SUPERNOVAイベントの最後に、新ハードウェアCS-4を発表しました。このCS-4は業界最速のAIアクセラレータで、フロンティアAIの新たな基盤になるそうです。今回のWSEチップは、「Wafer Scale Engine 3 Turbo」と命名されていて、このネーミングから新世代のチップを新たに開発したのではなく、前チップのWSE-3をより高速に改良したチップということが伺えます。しかしながら、WSE-3 Turboチップを搭載する新ラックは、全く新しいものになっています。本稿では、CS-3からCS-4にどのような技術革新が行われたのかをお知らせします。
■「WSE-3」チップと「WSE-3 Turbo」チップの比較
次の比較表を見ると、チップの違いは帯域幅にあります。メモリ帯域幅とは、900,000個ある演算コアに隣接するSRAMとの間の帯域幅で、ファブリック帯域幅とは、演算コア間の帯域幅となりますが、これらが約2倍になっており、計算性能も2倍になったようです。
「WSE-3 Turbo」という名前からも、WSE-3の基本部分は変わらずに通信帯域を増やしたという印象です。
■新ラック「Nexusラックスケールプラットフォーム」
CS-4では、WSE-3 Turboを搭載するラックを新しく開発しています。設計思想としては、計算・電力・冷却・I/Oを一緒に設計することが必要とのことで、結果的に1ラックベースのシステムとして開発したようです。ラックの写真は以下となりますが、1ラックに3基のWSE-3 Turboが搭載されます。
この新しいNexusラックスケールプラットフォームは、Cerebras Nexus Platform Architecture上で構築された最初のシステムとして、計算・電力・I/Oという3つの要素を中心にラックを再考したことで、それぞれに大きな革新をもたらしたそうです。
コンポーネント数は、従来から50%削減され、計算・電力・I/O用の自己完結型アセンブリを備えていて、CS-4はより速い製造と迅速なデプロイが可能だそうです。ラックを部品の密接な結合として扱うのではなく、専用ラックに各専用モジュールを搭載するというイメージです。
新ラックの中核となるのは、再設計されたコンピューティングサブシステムで、CS-4は次の図のように電源アレイに垂直に取り付ける、背面マウント型のウェハースケールバックパックを採用しています。
各ウェハースケールバックパックは、電力変換・直接液冷・高速I/O・制御電子機器をウェハーの周囲に直接構築した三次元パッケージの自己完結型モジュールになっています。演算処理と電源を分離することで、ウェハースケールバックパックは製造工程を簡素化、導入時間短縮などのメリットもあり、自動化の製造工程の割合が60%増加したそうです。
このアプローチは、ハードウェアアップグレードの道筋をよりクリアにできるそうで、システムの一部が新しくなったら、他の部分を再設計する必要は無いとのことです。これにより今回のCS-4だけでなく、今後続く、CS-5、CS-6も容易に実装できそうです。ちなみにSUPERNOVAイベントの最後に、今後のロードマップの話もあり、2027年にCS-5をリリースする予定とのことで、今後は性能が毎年2倍になっていくという話もありました。
■CS-4の高密度電力供給と新しいモジュール式I/Oサブシステム
CS-4は、従来のGPUボードと比較して、電力変換をプロセッサに100倍近づけることで、ボードレベルでの電力損失をほぼ完全に排除しています。これにより、WSE-3 Turboへの電力供給量が2倍となり、高い動作周波数を設定できるようになりました。
また、CS-4は、I/O帯域幅を2倍に拡大してしますが、これは、新しいプログラマブルI/Oサブシステムを採用しているからだそうです。
外部システムへの接続には、標準規格に準拠したRoCE v2 RDMA over Ethernetを利用していて、既存のインフラストラクチャや異種システムなどのシステムとのネットワーク接続も可能です。
新しいダイレクトウェハーリンクは、ラック内およびラック間でのスイッチ不要の接続を実現します。これらのモードを組み合わせることで、オペレーターは異種インフラストラクチャを柔軟に構築でき、大規模なCS-4クラスタを拡張することで、最先端のAIモデルを毎秒1,000トークン以上で処理することが可能になります。
■CS-4の性能
CS-4は、実運用環境で利用可能な推論速度において、新記録を達成したそうです。公開されている情報は以下の図となっていて、CS-4は一般的なGPUシステムでは達成できない速度でトークンを生成していることが分かります。実際の差としては、最大30倍の高速推論を実現しています。
また、これまでのAIインフラストラクチャは、2つの重要な成果として、「電力効率」と「高い総スループット」のどちらかを選択しなければなりませんでした。CS-4はこの両方を実現できるとのことです。
理由としては、従来のGPUシステムよりも最大30倍高速にトークンを生成すると同時に、CS-3と比較してワットあたりのスループットを最大10倍向上しているからと説明されています。
CS-4で実現できる生成AIの高速トークン生成は、他のシステムでは実現することができず、他の低速トークン生成よりも価値が高くなります。CS-4は限られた電力予算内で、より価値の高い高速トークンと、より多くのトークンを供給できるので、生成AIを提供するデータセンターの収益性を大幅に向上させるとも説明しています。
■超巨大LLM(10Tモデル以上)でも高性能
複数のアクセラレータで超大規模モデルを処理するには、プロセッサ間で情報を高速に転送することが重要です。CS-4はウェハー間の相互接続レイテンシをわずか2マイクロ秒にまで低減できるそうです。この低レイテンシ通信によって、CS-4は10Trillion(10兆個)を超えるパラメータを持つモデルでも、毎秒1,000個以上のトークンを処理できると説明しています。
■分散推論をネイティブにサポート
以前のブログで、AWS、AMDとの協業の中で、他チップとの分散システムについて書かせていただきました。CS-4は、この分散推論をネイティブにサポートすることで、異種混在型AIインフラストラクチャソリューションの一部として機能するように、ネイティブに設計されているそうです。
これは、推論の2つの主要なフェーズを補完的にコンピューティングプラットフォームに割り当てるアプローチになっていて、CS-4ではないGPUまたはASICインフラストラクチャで効率的なプリフィル処理(入力)を行い、CS-4で超高速デコード処理(生成)を行うというものです。
このアーキテクチャは、Cerebras CS-4システムのデコード性能と、AMD HeliosやAWS Trainiumなどのプリフィルプラットフォームを組み合わせるという異種推論のアーキテクチャとなりますが、独自LLM+生成AIサービスを提供する事業者様にとっては、主要なチップ+CS-4システムという柔軟な組み合わせで利用できる点と、差別化された高速生成AIサービスをユーザーに提供できるという点で非常にインパクトのあるアーキテクチャだと思います。
■最後に
今回、Cerebrasの旗艦イベントであるSUPERNOVA で発表されたCS-4について投稿しました。このCS-4システムによって、更なる高速生成AIを体験できます。なお、CS-4の出荷は2026年四半期に開始予定となっています。
また、CS-4は推論分散システムをネイティブサポートするため、日本の国産アクセラレータチップと組み合わせることで、日本のソブリンAIを高速で利用するというのも、十分に可能ではないかと期待しています。
最後に、このブログをお読みになり、LLMおよびAIアクセラレータ製品、高速推論等にご興味がある方は当社までお問い合わせいただければ幸いです。











