サーバークラウドストレージ

(連載)令和時代のサーバー入門
第4回 サーバーの仮想化(その1)

「令和時代のサーバー入門」シリーズではサーバーの基礎から仮想化、クラウドとったサーバーに関わる各テクノロジーについて触れていきます。
第4回の本記事ではサーバーの仮想化について、その仕組みやどういったメリットがあるかについて解説します。

はじめに

第4回となる本記事では、現代のサーバーを把握する上で最も重要な技術の1つとなる「サーバーの仮想化」について解説します。

 連載記事一覧:
  第1回 サーバー基本の「き」
  第2回 ストレージ基本の「き」
  第3回 アプライアンス
  第4回 サーバーの仮想化(その1)    ←本記事
  第5回 サーバーの仮想化(その2)
  第6回 クラウド利用(その1)
  第7回 クラウド利用(その2)

サーバーの仮想化は2000年頃から確立し始めた技術で、2024年現在ではほとんどの企業で採用されているのではないか、と思うくらい普及しています。

筆者がIT業界に足を踏み入れたのは2007年頃ですが、当時、よくVMware Playerを使って仮想サーバーを作り担当製品の検証を行っていました。そのときは便利なツールだな、程度にしか思っていませんでしたが、10~15年ほどでサーバー仮想化は広く普及し、いまや本番サービスを稼働させる基盤として多くの企業で利用されるようになっています。

サーバーの仮想化とは?

サーバーの仮想化とは、ソフトウェアを利用して「物理的な実体のない(=Virtualな)サーバー」を作ることを指します。

※ハイパーバイザーという呼び方について
OSはスーパーバイザーとも呼ばれていますが、(仮想サーバーの)OSを管理することから、さらに上位の意味を込めて「ハイパー」バイザーと呼ばれます。

尚、代表的なハイパーバイザーとしては次が挙げられます。
・VMware ESXi
・Nutanix AHV
・Microsoft Hyper-V

とはいえ、何もないところから「仮想サーバー」は作れないため、物理的なリソースが必要になります。
実際の仕組みとしては、ハイパーバイザーを動作させるための物理コンピューターが構成され、その物理リソースを利用して仮想サーバーを作成します。

上記の仕組みをとっていることで、ハイパーバイザーの物理リソースがある限り複数の仮想サーバーを作成することができます。

つまり、サーバーの仮想化技術により複数の物理サーバーを1物理筐体にまとめることができるようになります。

複数の物理サーバーを集約することで様々なメリットが生まれるのですが、それは後ほど記載します。
ここまでが、「サーバーの仮想化」の意味合いと基本的な仕組みの説明になります。

「ホスト」と「ゲスト」という呼び方

ハイパーバイザーが動作する物理筐体のことを、仮想化の環境を提供する側として「ホスト」や「物理ホスト」と呼ぶことがあります。また、「ホスト」に対して環境を利用する側の仮想サーバーのことを「ゲスト」や「ゲストOS」と呼ぶことがあります。
サーバー仮想化関連の話では、よく登場してくるワードとなりますので、ここで触れておきます。

サーバー仮想化のメリット

仮想化していない環境に比べて、仮想化された環境は多くのメリットがあります。
(多くのメリットがあるからこそ現在多くの企業で採用されています。)
ここでは主なメリットを記載していきたいと思います。

  • 省スペース、省電力
    サーバーの仮想化により、物理筐体の数が減りますので、省スペースに繋がります。
    また、結果的に物理部品数が減るため、トータルの消費電力量が削減される傾向にあります。

  • 導入コストの削減
    サーバーを調達する側にとっては一番大きな部分ではないでしょうか。
    小、中スペックの物理サーバーを10台調達するのと、高スペックの物理サーバー1台調達し10台の仮想サーバーを構成するのでは、後者の方が機器費用および導入費用が抑えられる傾向にあります。
    尚、明確なコストメリットがあるからこそ、サーバー仮想化がここまで普及され一般的になったと筆者は考えています。

  • 管理負荷の削減
    監視や保守契約対象となる物理筐体の数が減りますので、管理コストについても削減されます。

  • 迅速なサーバー調達
    新しいサービスや業務ソフトを導入したり、開発検証をすすめたり、と新しいサーバーの用意が必要なシーンは様々あります。その際、仮想サーバーであれば新しく物理サーバーを購入・設置するよりも速やかに新サーバーの手配が可能です。

    特に、動作検証するのに新規に物理サーバーを検証用に購入したりする必要がなく、仮想化環境で簡単に検証出来ることが最も大きなメリットの1つだと筆者は考えています。
    IT機器を販売する側、ユーザー側ともに構築や運用の作業品質という面において、仮想化技術の登場が大きく貢献していると思っています。

  • 可用性
    詳細は次回の記事に記載しますが、ハイパーバイザーの機能(ライブマイグレーションやHA)によりサーバーの可用性が向上します。

  • バックアップ簡素化
    筆者が以前バックアップ製品を担当していたこともあり、少し触れておきます。
    仮想化によりサーバーが物理環境から切り離されたことで、物理サーバー依存(固有のドライバ依存等)がなくなり、その考慮が不要になりました。また、ハイパーバイザー経由でバックアップできるようになり、各サーバーにバックアップエージェントを導入することもなくなりました。
    サーバーの仮想化により、バックアップの複雑性が緩和され、販売側およびユーザー側ともに負担が減ったと感じています。

まとめ

今回はサーバーの仮想化について、その意味合い・仕組み・メリットを解説しました。

本記事のポイント

  • サーバーの仮想化とは、物理的な実体のないサーバーを作ることである
  • 仮想化するためのソフトウェアのことをハイパーバイザーと呼ぶ
  • 1台の物理HW上に複数の仮想サーバーを作ることができる(サーバーを集約できる)
  • サーバーを仮想化することで様々なメリットがある

引き続き、第5回以降の記事も見て頂けますと幸いです。

次回案内

次回は、引き続き「サーバーの仮想化」について、構成・機能面をご紹介します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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