ハイパーコンバージドインフラ市場に登場した2つのトレンド「Kubernetes対応」と「disaggregated HCI」 | 東京エレクトロンデバイス

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ハイパーコンバージドインフラ市場に登場した2つのトレンド「Kubernetes対応」と「disaggregated HCI」

市場に定着するなど一定の成熟を見たハイパーコンバージドインフラ。ここへ来て2つのトレンドが新たに登場した。1つはサーバーとストレージを分離して、それぞれをスケール可能にする「Disaggregated HCI」(ディスアグリゲーテッド・ハイパーコンバージドインフラ)。そして、もう1つが「Kubernetes対応」だ。

ハイパーコンバージドにもDockerとKuberntesの波

ストレージ内蔵のサーバーをネットワークで接続し、仮想化ソフトウェアを用いることでスケールアウトなサーバーとスケールアウトなストレージを実現するのが「ハイパーコンバージドインフラストラクチャ」です。

日本では5年ほど前から注目を集め、このコラムでも2015年10月に「ハイパーコンバージドインフラストラクチャという統合サーバーの新潮流が登場」という記事でその動向を紹介しました。

ハイパーコンバージドインフラの基本的な特長は、導入が容易ですぐに使い始めることができ、前述したようにスケールアウト可能なサーバーとストレージが容易に実現できるという点にあります。この5年で各ベンダーともこうした点について製品を十分に成熟させており、もちろんベンダーごとの強みや弱みはあるにせよ、どの製品を選んでも安心して使えるソリューションとなりました。

その一方で、ハイパーコンバージドインフラを構成するソフトウェア面やハードウェア面では新たなトレンドも登場してきました。ソフトウェア面では「Dockerコンテナ」と「Kubernetes」への対応というトレンドです。

いまDockerコンテナがアプリケーションの新しい実行環境となり、その運用基盤としてKubernetesが事実上の標準になったことは、多くの読者がご存じでしょう。本コラムでも、2018年1月の記事「コンテナオーケストレーションツールの“事実上の標準”という座をつかんだKubernetes。その重要性とは?」で紹介しました。

ハイパーコンバージドインフラはそもそも仮想化統合基盤として登場しました。この仮想化統合基盤の上に、各ベンダーがDockerコンテナとKubernetesの環境を載せ、ハイパーコンバージドインフラをKubernetes基盤としても提供しようとしています。

例えばニュータニックス社は、独自のKubernetesディストリビューションである「Karbon」を2019年4月にリリースしています。Karbonは同社のハイパーコンバージドシステムの仮想化基盤上にワンクリックで環境を構築でき、管理ツールからKubernetesのクラスタを起動、運用できるのが特長です。

一方、Dell EMC社もハイパーコンバージド製品向けKubernetesソリューションとして「Dell EMC HCI for Kubernetes」を提供し、ハイパーコンバージドの上で容易にKubernetes環境を構築、運用できるようにしています。しかしこれとは別に、同社のグループ企業であるVMware社の仮想化ハイパーバイザー「vSphere」そのものが、内部にKubernetesを統合する「Project Pacific」を発表し、2020年3月にはそれを実現する「vSphere 7」のリリースが発表されました。

Dell EMC社のハイパーコンバージド製品群は、当然ながら仮想化ハイパーバイザーとしてvSphereを採用しているため、今後はこのvSphere 7とそれに統合されたKubernetesソリューションも、ハイパーコンバージド製品のうえで提供されていくことでしょう。


■関連する東京エレクトロンデバイスの製品

Nutanix(ニュータニックス)についてはこちら


 

Karbon
図1:2019年4月にリリースされたニュータニックス独自のKubernetesディストリビューション「Karbon」(https://www.nutanix.com/jp/products/karbon)

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Kubernetesに最適化したハイパーコンバージド製品も登場

新興ベンダーからは、ハイパーコンバージドインフラを仮想化統合基盤としてではなく、最初からKubernetes環境に最適化したものとして設計・実装する製品が登場してきています。Diamanti社の製品群も、そのひとつです。

同社のハイパーコンバージド製品では仮想化ハイパーバイザーを使わず、ベアメタルの上にLinux OSとKubernetes、Dockerを搭載しています。それゆえ仮想化ハイパーバイザーのオーバーヘッドがなく、Kubernetesクラスタが高速で実行できるというメリットがあるのです。

ただしこの場合、ハイパーコンバージド製品で一般的な実装である、仮想化のレイヤーでスケールアウトストレージが実装できないため、NVMe RAIDストレージコントローラーが高速かつある程度スケーラブルなストレージを実現、それをSR-IOVと呼ばれる仮想化ネットワークインターフェイスカードで各コンテナに割りつけるという形になっています。

このようにハイパーコンバージドインフラは仮想化統合基盤としてではなく、Kubernetes基盤としてのソリューションを備えたプラットフォームへと守備範囲を広げつつあります。

図2:DockerとKuberntesに最適化された「Diamanti D20」

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コンピュートとストレージを分離した新形態も

ハイパーコンバージドインフラにおける最近のもう1つのトレンドは、「Disaggregated HCI」(ディスアグリゲーテッド・ハイパーコンバージドインフラ)と呼ばれる新たな形態が登場してきたことでしょう。

ハイパーコンバージドインフラは前述したように、ストレージを内蔵したサーバーをネットワークで接続するものです。サーバーを追加するときには、常に内蔵されたストレージも同時に追加されるため、コンピュートだけを追加する、ストレージだけを追加するといったことができません。ストレージが足りないという状況でも、ストレージだけを追加するといった柔軟性にやや欠けるところがあるのです。

Disaggregated HCIは、このハイパーコンバージドインフラの欠点の解決を試みた統合システムです。

これまでのハイパーコンバージドインフラではサーバーとストレージは1つの筐体内に収まっていましたが、Disaggregated HCIでは再び分離。コンピュートノードとしてのサーバーと、ストレージのノードはそれぞれ独立させ、その間をNVMeなどの高速なインターコネクトやネットワークで接続することでシステムを構築します。

このとき、ストレージはストレージ単体でスケールアウト可能な機能を備えるものを使うのです。すると、システム構成はやや複雑になりますが、コンピュートとストレージを必要な能力に応じてそれぞれ独立して増減できるようになるという柔軟性と、それによるコストの最適化を実現できることになります。これがDisaggregated HCIの特長と言えるでしょう。

Disaggregated HCIは、HPE社がNimble Storageをベースにした「Nimble Storage dHCI」を、NetApp社が「SolidFire」をベースにした「NetApp HCI」をリリースしています。当然ながら、Nimble StorageとSolidFireのどちらも単体でスケールアウト可能なストレージです。

いずれにせよDisaggregated HCIにはスケールアウトストレージが欠かせないため、スケールアウトストレージを提供するベンダーが主導するトレンドとも言えるでしょう。

 

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※本記事は東京エレクトロンデバイスが提供する不定期連載のタイアップコラムです。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

※このコラムは不定期連載です。
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新野淳一

新野淳一Junichi Niino

ブログメディア「Publickey」( http://www.publickey1.jp/ )運営者。IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。新しいオンラインメディアの可能性を追求。