教育・研究機関
長距離高速ファイル転送の実証実験基盤に「Arista 7050QX」を導入
期待通りの性能で安定的なデータ転送を実現
お客様の課題
TEDのソリューション
大学共同利用機関法人
情報・システム研究機構
国立情報学研究所
先端ICTセンター
特任准教授
山中 顕次郎氏
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下NII)は2015年3月、長距離高速ファイル転送を可能にする新プロトコル「MMCFTP」の実証実験を行い、世界最速クラスのデータ転送に成功しました。実験が行われたネットワークには、東京エレクトロンデバイスの取り扱う、ボックス型10/40ギガビットイーサネットスイッチ「Arista 7050QX」が採用され、高速で安定的なデータ転送の実現を支えました。
先端科学技術の分野では、国際連携によって構築された実験装置などから得られた実験データが参加各国に転送されて分析されています。今、それら膨大な実験データを高速に転送したいというニーズが高まっています。NII 先端ICTセンター 特任准教授の山中 顕次郎氏は、実験の目的を次のように話します。
「実験データ量の増大と共にファイル転送の高速化が求められています。超高速ネットワークの整備なども進められていますが、プロトコルの制約でどうしても速度が上がらないという課題があります。そこで、新たなプロトコル“MMCFTP”を開発し、室内実験を経て、今回、長距離転送の実証実験を行うこととなりました」(山中氏)
MMCFTP(Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)は、データを転送する際に、同時に多くのTCPコネクションを使用することが特徴。ネットワークの状況に応じてTCPコネクション数を動的に調整することで、安定した超高速データ転送を実現する新プロトコルです。
実験は、国立研究開発法人 情報通信研究機構(以下、NICT)の持つ、研究開発テストベッドネットワーク基盤「JGN-X」の、東京-大阪-石川間の100Gbps回線を往復する形で実施されました。東京のNICT本部にMMCFTP用の送信機と受信機を設置し、石川県のNICT北陸StarBED技術センターとの間を往復する形で、1PBという巨大データの通信を行いました。この実験環境において、送信機/受信機とネットワークの間に設置されたL2スイッチが「Arista 7050QX」です。
NIIでは以前より、所内のネットワークとクラウド間のゲートウェイにAristaのスイッチを利用していました。そのため、Aristaのスイッチには信頼感があったと山中氏は言います。
「Aristaのスイッチは癖がなく、素直に作られていますので使いやすいのです。そのため、私は高速な転送を必要とするデータセンター用途などにはAristaのスイッチが安心だと考えていました。当時、40Gbpsに対応したスイッチはそれほど多くありませんでしたが、コストと性能のバランスを考え、Aristaのスイッチを実証実験に使うスイッチとして選びました」(山中氏)
Aristaのスイッチを使用することを決定したものの、実験のスケジュールは迫っており、納期の問題がありました。そこで、Aristaを取り扱う東京エレクトロンデバイスが全面的な支援を行い、納期を短縮、実験のスケジュールに間に合わせることができました。
「間に合うかどうか分からないという状況の中、東京エレクトロンデバイスが凄く苦労して納品してくれたので、実験を始めることができました。ここまで真摯に、手厚く対応してくれると思っていませんでした」(山中氏)
実験は2015年3月27日-28日に、1PBという巨大なデータを送信機のメモリー上のデータを受信機のメモリーに書き込む性能を測る「メモリー to メモリー」と呼ばれる条件で実施され、26時間31分55秒で転送することに成功しました。転送速度は83.7Gbpsでした。これは、1サーバー対1サーバーのデータ転送速度としては世界最速クラス(NII調べ)の結果となります。
実験では、MMCFTPにより多数の接続回線を束ねた場合でも、通信トラフィックがほぼ均等に分散されて高速転送が可能であることが実証されました。
「世界最速クラスのスピードを実証することができました。ここまでの速度が必要というケースは現在はまだあまりないですが、これから10年くらいは十分に対応できる転送スピードだと思います」(山中氏)
実験を支えた「Arista 7050QX」についても、L2スイッチとして期待通りの性能を発揮したことに加え、その使い勝手も山中氏は高く評価します。
「設定がとても容易で、例えば、複数のインターフェースを同時に設定するなど、そうしたところがすごく上手く、親切に作られていると感じました」(山中氏)
東京エレクトロンデバイスでは、今回の実験にあたり機器設定などの技術的な支援も積極的に行いました。また実験後には、更なる性能向上のための設定などマニュアルには書かれていない情報も共有しています。
今回の実験を成功させたNIIでは今後、国際環境でも実証実験を行うとともに、MMCFTPを先端科学技術発展のために提供していきます。
「すでに、転送プログラムはSINETの加入機関様に配布しており、先端的な機関様ではすでにテストなども始まっています。ハードウェア的にもAristaをはじめ、100Gbps対応のスイッチも出てきていますので、今後はさらなる安定化と高速化が期待できます」(山中氏)
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「未来価値創成」を目指す、国内唯一の学術総合研究所
NIIは2000年4月に設置され、2004年4月から大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構の一員として新しくスタート。ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなどの情報関連分野の新しい理論・方法論から応用までの研究開発を総合的に推進しています。また、大学共同利用機関として、学術コミュニティ全体の研究・教育活動に不可欠な最先端学術情報基盤(CSI、サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)の構築を進めるとともに、全国の大学や研究機関はもとより民間企業やさまざまな社会活動との連携・協力を重視した運営を行っています。NIIの「先端ICTセンター」は、所内のクラウドやネットワークなどの情報基盤の整備を行うとともに、新しいクラウドサービス基盤に関する研究・開発を推進しています。
記事は 2015年10月 取材・掲載のものです。