転換期を迎えるデータセンターネットワーク【前編】| 東京エレクトロンデバイス

技術解説

転換期を迎えるデータセンターネットワーク【前編】~新たなデータセンター・デザインを提案するAristaのソリューション~

クラウドや仮想化技術が普及し、ますます複雑化を遂げる今日のデータセンターのネットワーク環境。そこでは、従来にも増して高度な性能、信頼性、運用管理性が求められています。Arista Networks社(以下、Arista)では、先進のイーサネットスイッチソリューションの提供により、いままさに転換期を迎えるデータセンター運用における新たなデザインを提案。今日のデータセンターネットワークが抱える課題をトータルに解消しています。

データセンター用途に特化したイーサネットスイッチソリューション

Aristaでは2005年の設立以来一貫して、データセンターが抱える課題、ニーズにフォーカスしたイーサネットスイッチソリューションを提供しています。今日では、ITの世界を牽引する大手企業をはじめ、数多くのユーザーが同社の製品を採用しており、その数はグローバルで2000社(*1)以上にのぼります。国内でもアリスタネットワークスジャパンが2010年に設立され、金融分野のユーザーやデータセンター事業者、クラウド事業者などを中心に200社(*2)を超える企業がArista製品を活用しています。
データセンター用途に特化したAristaのイーサネットスイッチソリューションの特長として、まずあげられるのが業界最高クラスの低遅延を実現していること。特に今日のコンピューティング環境では、ユーザーからのアクセスに対して、例えばサーバー間や仮想マシン間、ストレージ間など、データセンター内において膨大なトラフィックが発生します。こうした、いわゆる“East/West”、すなわち水平型のトラフィックはデータセンター全体の8割を占めるともいわれています。Aristaのソリューションでは、そうしたトラフィックの最適化によるレスポンスの向上を実現しています。
また、オープンな思想をベースにデザインされていることも、Arista製品の重要なポイントです。OSはLinuxベースのものとなっており、プロトコルについてもすべて業界標準のみを採用。これにより、他ベンダー製品とも広範な接続性を確保しており、このことはユーザーにとって、ベンダーロックインの懸念なく、将来に向けて確実に資産を保護していけるということにほかなりません。さらに資産保護という観点では、業界標準のCLI(Command Line Interface)の採用により、ユーザーが有する既存の運用ノウハウをそのまま活用でき、別途、トレーニングなどを実施する必要もありません。
加えて、膨大な数のIT機器が稼働するデータセンターにおいては、その消費電力をいかに抑えるかという問題も近年では切実な課題となっています。これに対しAristaのイーサネットスイッチ製品では部品点数を極小化することで、消費電力の大幅な削減を実現。部品点数が少なくなれば、それだけ故障発生率も低下し、結果として、高可用性や導入コスト及び運用コストの削減にも貢献します。
(*1*2は2014年実績)
データセンターにおいてイーサネットスイッチに求められる要件

図1:データセンターにおいてイーサネットスイッチに求められる要件

いままさに転換期を迎えるデータセンターのデザイン

Aristaのイーサネットスイッチでは、以上のような特長に基づき、いままさに転換期を迎えるデータセンターのデザインに最適なソリューションを提供しているわけです。これに関し、今日のデータセンターにおける通信環境では一般に、サーバー群の上位にトップオブラック型あるいはボックス型のスイッチを配して回線を集約し、L2ベースでリンクアグリゲーションを行うというかたちがとられています。Aristaにはこのソリューションとして、シンプルなネットワーク冗長機能を提供するMLAG(マルチシャーシリンクアグリゲーション)機能を搭載。STP不要のActive-Active構成によって、バックアップリンクの帯域を有効活用することが可能となっています。しかし、この形態では、接続機器が急速に増え続けるなかで、スイッチ配下のMACアドレスが膨大な数となり、ブロードキャストやアグリゲーションの処理自体の負荷が高まって制御自体が困難な状況となってきています。
そこで、今後のデザインの方向性として普及が進んでいるのが、トップオブラックにL3スイッチを配し、ECMP(Equal Cost Multipath:等価コストマルチパス)を介してトラフィックの負荷分散を行って帯域を有効活用するという形態です。これによってすでに述べたL2ベースの仕組みにおける問題を解消していこうというわけです。さらに、なお一層の大規模化に対応していく方法としては、VLAN-IDの制限やデータセンター間のモビリティの問題にも対応するVXLAN(「後編」で詳述)を実装したスイッチの活用で、透過的にスケーラビリティを確保していくというアプローチもすでに実現されてきています。
サーバー数に応じたデータセンター・デザインの方向性

図2:サーバー数に応じたデータセンター・デザインの方向性

先進のソリューションでデータセンターの課題をトータルに解消

こうしたデータセンターのデザインの新たな潮流とリンクするかたちで、Aristaではその提供するイーサネットスイッチ製品「Arista 7000シリーズ」のラインアップを順次整備しています。具体的には、まず2013年の初頭にリリースした「7150」ではVXLANをサポート。以降、投入された「7050X」「7200」「7300」シリーズおよび最上位モデルである「7500E」シリーズの各製品では同様にVXLANをサポート。それぞれの製品においてユーザーのニーズに応じたL3ベースの低遅延や高密度集積を実現しています。
一方でこれら「Arista 7000シリーズ」を支えるOSも、データセンターの安定稼働、運用効率性を支えるArista独自のノウハウが組み込まれたものとなっています。このOSはEOS(Extensible Operating System)と呼ばれるもので、そこではCLIやSNMP、STPといった各種プロセスのステータスを一元管理するデータベースsysDBを中核として、各プロセスの実行を完全にモジュール化して分離。それらプロセス間の通信については、すべてsysDBを介して行うかたちとすることでプロセス相互の依存性を排除し、それより例えばプロセス単位で障害を検知してリスタートしたり、モジュールごとに無停止でアップグレードを行うといったことを可能にするなど、OS全体としての高い安定性を実現しています。さらにLinuxカーネルをほぼそのまま利用した機能拡張も柔軟に行えます。このOSこそがAristaの神髄であり、従業員の6割以上がソフトウェアの開発に従事しています。
完全にモジュラー化されたOSが高い安定性を実現

図3:完全にモジュラー化されたOSが高い安定性を実現

 以上のようにAristaでは、先進のイーサネットスイッチソリューションの提供により、今日のデータセンターが抱える課題をトータルに解消するとともに、クラウド、仮想化環境に最適な新たなデータセンター・デザインを提案しているのです。


 
>> 転換期を迎えるデータセンターネットワーク(後編)

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