放送システムのIP化とは?その動向や将来性などについて詳しく解説!!

技術解説

放送システムのIP化とは?その動向や将来性などについて詳しく解説!!

放送システムに大きな変革が起こっています。「IP化」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?従来テレビ局で使用されてきた、SDI(Serial Digital Interface)規格の信号を同軸ケーブルで伝送するシステムが、IPの規格・伝送に置き換わることを指す言葉です。 近年、放送システムのIP化は世界的に進んでおり、日本でも機運が高まりつつあります。この記事では放送システムのIP化の詳細と歴史、そのメリット・デメリットや将来性について詳しく解説します。

  • 放送システムのIP化とは?
  • 放送システムのIP化への道のり
  • 放送システムのIP化のメリットと将来性
  • まとめ

放送システムのIP化とは?

放送システムのIP化とは?

「放送システムがIP化される」という報道を目にしたことはないでしょうか?簡単に言えば、放送システムのIP化とは「放送局内の伝送システムがIPネットワークに置き換わること」を指します。従来のしくみであったSDIからの移行が世界的に進んでおり、日本でも近年この動きが拡大しつつあります。ここではまず、放送システムのIP化の概要について解説します。

放送システムのIP化

放送システムのIP化とは、「IP(インターネットプロトコル)を用いた放送システムへの移行」を指します。IPは、現在「インターネット」と呼ばれている技術を基礎づける通信規格のことです。IPは現代の世界を支える通信技術と言えるでしょう。
放送のIP化とは、「SDI」という技術を主に利用していた従来のテレビ放送から、このIPを用いたテレビ放送への移行を指します。近年は映像技術が発達し、4Kや8Kといった高画質な映像を扱う機会も増えてきました。そのため、従来のSDIと呼ばれる技術では対応しきれなくなりつつあり、放送のIP化がさらに拡大するとみられています。
最近では、番組配信や動画配信をはじめとして、インターネットを用いたエンターテインメントが主流となりつつあり、テレビやラジオといった従来からの放送媒体はむしろ下火になっていると言われています。最近では、テレビ局による見逃し番組の動画配信サービスなども普及が始まっており、インターネットを用いた番組配信が普及しつつあります。こうした流れも、放送システムのIP化の一部と言えるでしょう。

SDIとは

「SDI」とは、従来のテレビ放送で主に使われている通信規格を指します。「SDI」とは、「Serial Digital Interface」の略称で、主に業務用の映像機器で使われています。最長100mほどの距離でも映像を遅延なく伝送できることから、テレビ業界では長らくSDIを用いた同軸ケーブルで映像を伝えてきました。
しかし近年、映像の質が大きく向上すると、映像伝送にも飛躍的な技術向上が求められるようになります。従来のHD解像度までは、SDIを使った通信で対応していましたが、4Kや8Kといった高解像度の映像が現れると、SDIでは対応しきれなくなってしまうのです。SDIでも伝送が不可能な訳ではありませんが、同軸ケーブルを何本も束ねて伝送しなければならないため、配線等に都合が悪く、コストや効率面での問題が指摘されています。
こうした事情もあり、SDIを使った放送システムがIPを使った放送システムに取って代わられようとしているのです。

放送システムのIP化への道のり

放送システムのIP化への道のり

近年、放送システムのIP化が話題となっていますが、放送業界はどのような現状にあるのでしょうか。日本や海外で、放送のIP化はどの程度進んでいるのでしょうか。ここでは、海外でのIP化と日本のIP化の流れについて解説します。また、現代の放送システムのIP化を支えているネットワーク技術についても解説します。

海外でのIP化

海外、特に欧米では放送システムのIP化は比較的早く、今から10年以上前から始まっています。イギリスでは、2000年代から既に地上波放送番組の見逃し配信や同時配信が始まっており、アメリカでも同年代に見逃し配信が、2010年代には同時配信が始まっています。

欧米での放送システムのIP化が早かったのは、放送に関する制度上の手続きの進みやすさや、地理的にケーブルテレビ網が発達しやすかった、といった事情もあるようですが、コストカットにも役立つIP化に放送各社が積極的だった、という指摘もされています。

放送システムのIP化は世界各国で進んでおり、国際規格の登場やクラウド化など、今後も発展が期待されています。(参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2207/22/news174_2.html, https://www.screens-lab.jp/article/28116

 

日本でのIP化の拡大

日本での放送システムIP化は、海外に比べると大きく遅れています。特に番組の同時配信については、NHKによる「NHKプラス」など、2020年代に入ってからようやく動きが始まったということもあり、欧米諸国に後れを取っています。

とはいえ、日本でも近年はテレビよりもパソコンやスマートフォン、タブレット等で番組を楽しむ人も増え、テレビモニターがIP放送に対応したデバイスに変わりつつあります。そのため、放送業界全体としてIP化の機運が高まっており、各局が対応をはじめているのが現状です。

(参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000519215.pdf

 

IP化を支えるネットワーク技術

近年のIP化拡大を支えているのは、技術的な進歩によるところが大きいとされています。映像技術の発展だけでなく、ネットワーク技術の進歩に伴い、高解像度・大容量の映像を、広範囲に遅延なく伝送できるようなしくみが確立され始めています。

光ファイバーを用いたLANの構築や、広域Ethernetを用いたWANの構築を始めとするネットワーク技術が普及していることに加えて、近年ではクラウド化の動きも盛んになりつつあります。放送システムのクラウド化はまだ先の話ではありますが、近年の放送IP化は、こうした技術の進歩によって支えられています。

放送システムのIP化のメリットと将来性

放送システムのIP化のメリットと将来性

日本を含む世界中で放送システムのIP化が進んでいますが、IP化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。反対に、放送システムのIP化にはデメリットや課題はないのでしょうか。放送システムのIP化は今後も進むと予想されていますが、メリットとデメリットを踏まえて動向をとらえる必要があります。そこで、ここではIP化のメリットと課題、将来性について解説します。

放送システムIP化のメリット

放送システムIP化には、「長距離・大容量の伝送がしやすい」「コスト削減」「制作から配信までシームレスにできる」といったメリットがあります。従来のSDIを使ったテレビ放送には、大容量の伝送を行う際にケーブルを増やさなければならないなど、技術的な手間や限界があります。光ファイバーを用いたIP化によって、そうした技術的な制限を乗り越え、高画質・大容量な映像にも対応しやすくなると期待されています。

また、放送システムのIP化にはコスト削減というメリットもあります。従来の映像配信では専用の映像機器を使わなければならないため、非汎用的な機器に多くのコストを割かなければなりませんでした。しかしIP化が進めば、汎用的なネットワーク機器さえ用意し、ネットワークを構築すれば良いため、コスト削減につながります。

放送システムのIP化には、撮影から編集、配信までの業務をシームレスに行えるというメリットも期待されています。既に各テレビ局では放送システムのIP化が段階的に進んでいます。伝送や配信はまだIP化を導入できていなくとも、番組の制作・編集の段階ではIP化を導入している企業も多いとされています。今後IP化が進めば、制作から配信までの全てがIPで成立するため、シームレスな放送が可能となると言われています。

(参考:https://www.screens-lab.jp/article/28116, https://www.soumu.go.jp/main_content/000825385.pdf

 

放送システムIP化のデメリット・課題

放送システムのIP化には、課題も指摘されています。1つは、IP化のためのエンジニアの不足です。テレビ局だけでは放送システムのIP化の全てを実現することはできないため、IP化にはネットワークをはじめとする技術的な専門家の存在が求められます。大容量の通信にも耐え得る、遅延の無いネットワーク構築や、制作から配信までをシームレスに行うためのシステム開発など、エンジニアが求められる場面は増えています。近年は様々な業界でエンジニア不足が叫ばれていますが、放送システムのIP化においても同様のことが言えます。

また、IP化によるセキュリティ対策の向上も課題として求められています。インターネットを通じて番組の制作や配信を行うしくみを導入しようとすれば、外部のネットワークと接する機会も増え、セキュリティ上のリスクも高まります。テレビ局などの大企業においてセキュリティインシデントが発生すると、多くの人の生活に影響が及ぶ可能性が高いと予想されます。放送システムのIP化を進めるのであれば、厳重なセキュリティ対策を講じなければなりません。

放送システムのIP化の将来性

放送システムのIP化には、将来性も期待されています。もちろん多くの課題もありますが、海外を中心に実績もあり、国内でも段階的にIP化を取り入れているテレビ局が増えているため、今後もそのメリットを活かせるようなしくみが作られていくことが期待できるでしょう。

今後は単なるIP化だけでなく、放送システムのソフトウェア化、クラウド化まで進むことが予想されます。テレビ局が自社で放送用のシステムを構築するのではなく、汎用的な放送用ソフトウェアが開発されたり、クラウド環境を利用して放送システムを構築したり、といった動向が予想されています。もちろん、多くの課題はあるでしょうが、今後の放送業界の動向には今後も注目が集まりそうです。

まとめ

放送システムのIP化とは、従来のSDIによる映像の伝送から、IPを用いた伝送への置き代わりを指す言葉です。映像技術の発達に伴い、高解像度・大容量の映像を伝送する機会が増え、従来のしくみには限界が訪れつつあります。

放送システムのIP化には、大容量の伝送が可能となるだけでなく、テレビ局のコストカットやシームレスな業務など、多くのメリットがあります。もちろん、エンジニアの不足やセキュリティ対策など、解決すべき課題もあります。将来的にはソフトウェア化やクラウド化など、より進んだ技術を用いてさらに放送システムが進化するかもしれません。進化し続ける放送システムのIP化に、今後も注目したいところです。

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