サービス
「Arista 7000」シリーズでバックボーンを10GbE化
保守コストを約2/3に削減し、可用性も強化
お客様の課題
TEDのソリューション
株式会社マピオン
運用技術センター
運用技術グループ
リーダー
蛭田 伸行氏
地図検索サイト「マピオン」で知られる株式会社マピオン。同サービスのバックボーンは従来、保守コスト増に悩まされており、なおかつ、トラフィック増や将来のデータ増への対応に不安を抱えていました。また、スパニングツリー以外の高可用性実現手段を探していました。そこで、東京エレクトロンデバイスの支援のもと、スイッチを「Arista 7000」シリーズにリプレース。保守コストを従来の約2/3に削減可能となり、10GbEへの帯域増強を実現しました。さらにはスパニングツリーに替わる「MLAG」によって、よりシンプルな形で高可用性を実現可能となりました。
日本最大級の地図情報サイト「マピオン」を柱に事業を展開する株式会社マピオン(以下、マピオン)。更新頻度の高い地図データをベースに、日本全国主要スポット900万件の電話番号・地図・住所などを探し出せる「マピオン電話帳」をはじめ、多彩な切り口で地図情報を検索できるサービスを提供しています。
そのなかで、誰もが簡単かつ快適に地図を利用できるデザインや操作性を追求し続けています。2009年には長年の取り組みが評価され、公益財団法人日本デザイン振興会主催の「グッドデザイン賞」を受賞しました。
2012年10月、マピオンのサービス提供基盤はネットワーク機器刷新の時期を控え、機器のリプレースを検討し始めました。それを機会に、既存ネットワークが抱える諸種の課題の解決も狙いました。
マピオンのネットワークはスマートフォンやタブレットの普及などを背景に、トラフィックが直近の2~3年で約4倍に増えていました。加えて近い将来、地図のさらなる改善に伴うデータ増も予定していました。
「既存ネットワークのバックボーンは1Gbpsでした。近年のトラフィック増や今後のデータ増を鑑みると1Gbpsでは心許なく、もっと太いバッグボーンにする必要がありました。同時に、コスト削減も図りました。なかでもネットワーク機器の保守コストが膨れあがっており、その削減は大きな命題でした」(蛭田氏)
高可用性を維持するしくみのさらなる最適化も課題でした。既存ネットワークでは実現手段として、スパニングツリーを採用していました。
「スパニングツリーでも求める可用性は実現できていましたが、ネットワークがどうしても複雑になります。それに、切り替え時の瞬断や操作ミスによるループ障害などの恐れが常につきまとっていました。刷新後のネットワークでは、スパニングツリーではない新しいアーキテクチャを使い、もっとシンプルな形で高可用性を実現したいと考えました」(蛭田氏)
蛭田氏らは2012年末からネットワーク機器の検討を開始しました。候補を3メーカーの製品に絞った後、比較検討の末に、東京エレクトロンデバイスが提供するアリスタネットワークス社(以下、アリスタ社)の10GbEスイッチ「Arista 7150S-52」と「Arista 7048T-A」の導入を決めました。
採用の決め手に蛭田氏がまず挙げたのは、実績および集積度の高さです。たとえば「Arista 7150S-52」なら、1Uの筐体に52個の10GbEポートを備えるなど、集積度の高さが特長のひとつです。
「数多くの企業で採用されている実績の高い10GbEスイッチであることが採用の前提となりました。その上、集積度の高さゆえ、データセンターのラック占有スペースを減らせるため、コスト削減に効果的である点も私たちの要望にマッチしていました」(蛭田氏)
そして、「Multi-Chassis Link-Aggregation 」(MLAG)機能も採用のポイントになったと蛭田氏は言います。MLAGは、2台のスイッチをまたいだリンクアグリゲーションによる冗長接続を可能とする技術です。
「MLAGはネットワークをシンプル化できるなど、スパニングツリーに替わる高可用性実現のための新しいアーキテクチャとして、非常に魅力的でしたね」(蛭田氏)
同社はネットワークのスパイン(幹)には「Arista 7150S-52」を、リーフ(葉)には「Arista 7048T-A」を導入し、MLAGで冗長化しています。これらの導入から運用管理は東京エレクトロンデバイスの支援の元に行っています。
「東京エレクトロンデバイスは単に機器を調達するのではなく、当社のネットワークにとってベストな構成を提案してくれました。私たちはArista製品自体にあまり詳しくなかったので、非常に助かりました。また、営業担当の方の製品知識が豊富で、疑問などが生じた際は多くの場合、エンジニアやメーカーにエスカレーションすることなく、その場で即答えてもらえるのも嬉しいですね」(蛭田氏)
ピンチアウトで拡大
2013年5月中旬から導入に取りかかり、7月に完了しました。導入直後から「Arista」によるさまざまな効果が得られています。蛭田氏はバックボーンを10GbE化した効果を次のように語ります。
「将来のアクセス増やデータ増にも安心して対応できるようになりました。現時点でも、マピオンのシステムでは地図の検索用データを1台のマスターサーバーから、複数台の検索サーバーに1日何度もコピーして更新するのですが、10GbE化によってコピー時間を大幅に短縮できたため、地図検索サービスのさらなる高品質化が果たせました」
コスト削減も狙い通りの効果が得られたと蛭田氏は目を細めます。
「導入費用は既存ネットワークとほぼ同じでした。つまり、同等の導入コストで10GbE化できたことになります。保守コストは、『Arista』の高い集積度のおかげで、ラックスペースを従来の4本から半分の2本に減らせたのが大きいですね。年間で保守コストを従来の約2/3に削減可能となりました」(蛭田氏)
あわせて、高可用性を実現するしくみ、および運用管理の最適化も達成できました。
「MLAGによって高可用性を維持しつつ、ネットワークをシンプル化できました。スパニングツリーによる切り替え時の瞬断、操作ミスの恐れから解放されて助かりますね。また、元サーバーエンジニアの私としては、慣れ親しんだbashのシェルスクリプトが使え、運用管理が簡単に行えるところも気に入っています」(蛭田氏)
マピオンは今後、刷新したバックボーンを活かして、さらなるサービス強化を進めていきます。その具体策のひとつがクラウド導入です。
「内部とクラウドを適切に使い分ける地図検索サービスのハイブリッド化に取り組みたいと考えています。クラウド導入においては、OpenStackなどの最新技術を積極的に利用したいですね」(蛭田氏)
「マピオン」は月間1200万人が利用する日本最大級の地図検索サイトです。地図はマピオンユーザーとの共同作業で作り出しており、たとえば1/3000以下の詳細縮尺では、駅周辺は地下鉄の出入口が最も目立つようにデザインを工夫するなど、「美しい」「迷わない」にこだわった実用性の高い地図として高い評価を受けています。
加えて、日本全国の地図検索はもちろん、旅行・観光地情報をはじめ、各種レジャー情報、電話帳、天気予報、乗換案内、ルート検索など、地図情報と関連性の高いコンテンツをパソコン/スマートフォン/携帯電話向けに提供しています。
また、モバイル端末の位置情報機能を利用した戦国スタンプラリーゲーム『ケータイ国盗り合戦』も提供しており、会員数は、約100万人以上にのぼります。
さらに、「マピオン」で培ったノウハウを活かし、法人向け地図ライセンスサービスも提供中。金融、アパレル、飲食、自動車、不動産など、多岐にわたる業界・企業にて、10年間で700以上の法人ユーザーに利用され、1300万件以上の拠点情報が運用されています。
記事は 2013年11月 取材・掲載のものです。