Publickey新野淳一IT羅針盤

2020年に注目したいテクノロジー「ハイブリッドクラウド」「WebAssembly」、そして「サーバー向けプロセッサ市場の変化」とは?

2019年2月にこのコラム欄に掲載した記事「2019年のIT業界展望――ソフトはマイクロサービスに注目、ハードはNVMe SSDが普及の兆し」では、2019年のトレンドとしてソフトウェアではマイクロサービスを、ハードウェアでは不揮発性メインメモリとNVMe SSDを紹介した。果たして、2020年は?

まずは2019年を振り返ると

2019年はマイクロサービスを技術要素とする「クラウドネイティブ」が注目された年になりました。クラウドネイティブは立場によって範囲や定義が異なる場合がありますが、コンテナやマイクロサービス、APIなどを用いた分散アプリケーションのアーキテクチャの実現のほか、テストの自動化やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリ)といった開発プロセスの自動化を通じて、ビジネスにアジリティをもたらします。

 

2019年8月掲載の本コラム「クラウドネイティブとはなにか――クラウドファーストとなにが違うのか?」でも、これらのことについて詳しく解説しています。

一方、ストレージクラスメモリの本命であるインテル 「Optane DC persistent memory」も、2019年に予定通り、正式な出荷が開始されました。最新サーバーへの搭載も始まりましたが、とくにストレージ業界においてはこの高速なストレージクラスメモリを活かすために、SSDのインターフェイスがSATAからNVMeとなり、さらにそのNVMeをネットワークにまで延長するNVMe over Fabricsが注目されるなど、ストレージ製品群の変化が目立ちました。

 

これについても、2019年9月掲載の本コラム「NVMeNVMe over Fabricsが変える新しいストレージの姿とは?」を参照ください。

ハイブリッドクラウド」に対する注目の高まり

では、2020年はどのようなテクノロジーに筆者が注目しているのか、紹介しましょう。

 

1つ目はハイブリッドクラウドです。2019年8月掲載の本コラム「今年はついにAWSやGoogle、VMwareが本格展開 ―― 主要クラウドベンダーのハイブリッドクラウド戦略とは?」でも書いたように、2019年後半にはAWS、Azure、Googleといった主要クラウド各社からハイブリッドクラウド対応製品が出そろいました。

 

主要クラウドベンダーだけでなく、ほかのクラウドベンダー、サーバーベンダー、ストレージベンダー、ネットワークベンダーなど多くの企業が、ハイブリッドクラウドで実現するソリューションを発表しています。

例えばハイパーコンバージドシステムベンダーのNutanixは2019年5月、AWS上にNutanixシステムを構築できる新サービス「Xi Clusters」を発表しています。これは同社がこれまでアプライアンスとして提供してきたシステムと実質的に同じものを、AWS上のベアメタルサーバーとストレージを用いてオンデマンドで構築できるというものです。これによって、オンプレミスとクラウド上のどちらにもNutanixのシステムを置けるようになるため、ハイブリッドクラウドの実現が容易になりました。

こうしたハイブリッドクラウド構築のさまざまな選択肢が充実してきたことで、2020年はハイブリッドクラウド構築へ実際に動く企業が増えていくのではないでしょうか。もちろん、コンテナやクラウドネイティブの浸透といったクラウド活用の進化が加速することも間違いないでしょう。


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新しいWebプログラミングを拓く「WebAssembly」

WebAssembly」は、エンタープライズ領域ではまだ注目されていませんが、筆者が個人的に注意深く動向を追いかけているテクノロジーです。

 

WebAssemblyとはWebブラウザで実行できるバイナリフォーマットです。これまでWebブラウザで実行できるプログラミング言語は基本的にJavaScriptだけでしたが、コンパイルしてWebAssemblyを出力できるプログラミング言語であれば、どんな言語でも今後はWebアプリケーションの開発が可能になります。

現時点でC/C++やRust、Goなど複数のプログラミング言語がWebAssemblyの出力をサポートしています。またWebAssemblyは2019年12月にW3Cの勧告に到達しており、主要なブラウザでサポート済みです。

そのため、これからはJavaScript以外の言語でのWebアプリケーション開発がWebAssemblyによって拓かれていくと筆者は見ています。2020年はこうした可能性にも注目が集まるかもしれません。

WebAssemblyの動向については、次回以降の本コラムで、改めて詳しく紹介する予定です。

「サーバー向けプロセッサ」で少しずつ存在感を増すインテルの競合

最後にハードウェアについても触れておきます。

企業向けのサーバーおよびクラウド向けサーバーにおいて、ここ数年はインテルの独壇場が続いていました。AMDもx86互換プロセッサをサーバー市場に投入していましたが、性能やコスト面で見劣りするなどの理由からほとんど存在感を示すことができない状況でした。

しかし2019年、AMDが「ROMA」のコードネームで開発してきたデータセンター向けの新プロセッサ「第二世代EPYC」は、最新の7nmプロセスルールで製造され、最大64コアを搭載、最大4テラバイトのメモリをサポートするなど、性能とコストの面でインテルのプロセッサに対して十分な競争力を持つとされています。

すでにAMDのプロセッサは、デスクトップ向けの領域でそのコストパフォーマンスの高さが評価されており、それを受けてサーバー向けプロセッサでも期待が高まっているのです。

 

また、2019年3月掲載の本コラム「ARMサーバーはついに離陸するのか?――― HPEやAWSなど大手ベンダーに相次ぐ活発な動き」でも書いたように、ARMプロセッサもエンタープライズやクラウド向けのサーバーにおいて少しずつ存在感を高めています。

 

さらに2019年12月には、AWSが独自設計ARMプロセッサの第二世代とな「Graviton 2」を発表。自身でARMプロセッサを開発、進化させていく姿勢を明確にしました。

このようにサーバー向けプロセッサにおけるインテルの立場を脅かす存在が少しずつ増えています。この市場が2020年のたった1年で急激に変化するとは考えにくいですが、徐々に変化していく可能性は十分にあります。だからこそ、しっかりと動向を注視していきたいと考えています。

※本記事は東京エレクトロンデバイスが提供する不定期連載のタイアップコラムです。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

※このコラムは不定期連載です。
※会社名および商標名は、それぞれの会社の商標あるいは登録商標です。

新野淳一

新野淳一Junichi Niino

ブログメディア「Publickey」( http://www.publickey1.jp/ )運営者。IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。新しいオンラインメディアの可能性を追求。

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