フラッシュストレージとは?SSDやHDDとの違いや導入メリットを徹底解説

技術解説

フラッシュストレージとは?
SSDやHDDとの違いや導入メリットを徹底解説

企業のIT環境には仮想化技術が採用されることが主流になっています。業務アプリケーションやデータベース、VDIなどがサーバーに集約されるのに伴い、サーバーからアクセスするストレージにも高い処理能力が要求されるようになりました。 これまで主流であったHDDの処理能力は頭打ちの状態が続いており、CPUやメモリの処理能力が向上している中で、システム性能のボトルネックになっています。そこでHDDに代わってSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)を利用した「フラッシュストレージ」の採用が広がっています。

  • フラッシュストレージとは
  • フラッシュストレージの種類
  • フラッシュストレージの歴史
  • フラッシュストレージを導入するメリット
  • まとめ

フラッシュストレージとは

フラッシュストレージとは

 

フラッシュストレージの定義

フラッシュストレージとは、データの書き込み・保管先にフラッシュメモリチップを用いたストレージ技術および製品です。フラッシュメモリとは、半導体素子を利用した不揮発性の記憶媒体のことであり、電源をオフにしてもデータが失われません。「フラッシュ」という名称は、データ消去を瞬時に行えることに由来しているといいます。

フラッシュストレージは、記憶装置にHDDを用いたストレージに比べてランダムアクセス性能が高く、データの書き込みや読み込みを高速に行うことができます。さらに、小型、軽量、省電力であることも特長です。

 

フラッシュストレージとSSDの違いや関係性

SSDとは、フラッシュメモリを用いた補助記憶装置の総称です。フラッシュストレージは、このSSDで構成されたストレージ製品を指します。一部の例外を除いてSSDはフラッシュメモリを用いていることから、フラッシュストレージとSSDは実質的に同義となっています。

SSDは製造技術が進歩したことで多くのデータを保持できるようになり、データやファイルの大容量ストレージとして利用が進んでいます。エンタープライズ用途において「フラッシュストレージ」と言うとき、HDDに代わるストレージアレイとしてラックユニットで使用される製品を意味することが一般的になってきました。

Pure_CV|東京エレクトロンデバイス

フラッシュストレージとHDDの比較

フラッシュストレージ(SSD)とHDDではそれぞれにメリットとデメリットがあります。SSDは性能や耐久性に関してメリットがある一方で、容量あたりの単価がHDDに比べて高価というイメージがありました。しかし、近年ではその価格差はかなり縮まっており、より利用が広がっています。

  フラッシュストレージ(SSD HDD
構造の特徴 電子によるストレージ 機械駆動によるストレージ
アクセス速度 ○高速アクセス(特にランダムアクセス) ▲アクセス速度は SSD に劣る
耐振動・耐衝撃 ○振動、衝撃に強い ▲振動、衝撃に弱い
消費電力・動作音 ○低消費電力、静音 ▲駆動部分があるため消費電力が多く、動作音と発熱を伴う 
省スペース ○メモリなどの部品を基板上に直接配置できるため省スペース ▲ディスクがあるため省スペース化に限界がある 
価格 ▲容量あたりの価格が比較的高い ○容量あたりの価格が比較的安い 
障害復旧 ▲完全なデータ復旧技術は確立されていない  ○データ復旧技術が確立されている
長期利用

▲書き換え回数に限度あり

▲機種によっては長期間使用しない(電源オフの状態)とデータ消失する可能性があり

○長期間の保存が可能

▲可動部があるためSSDよりも障害が発生しやすい 

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フラッシュストレージの種類

フラッシュストレージの種類

 

「フラッシュストレージ」と聞くと、SSDのみで構成されるストレージアレイをイメージするかもしれませんが、以下の通りいくつかの種類に分けられます。

 

種類 特徴
SSDフラッシュ系

HDDの代わりにSSDを用いたもの。DD向けのアーキテクチャを利用するためSSDの性能を発揮できるように最適化されているわけではない。

PCIeフラッシュ系

サーバーのPCI Express(PCIe)スロットに直接接続するためSSDよりも高速。一方で大容量化は困難。

SSD + 重複排除機能系

仮想デスクトップなど重複領域が多い用途においてSSDのコストの低減や長寿命化が期待できる。パフォーマンス重視のシステムには適さない。

ハイブリッドフラッシュ系

HDDとSSDを混在した構成のストレージ装置。データの特性によって使い分けることで高速化を図りつつ大容量のストレージを安価に実現する。

 

SSDフラッシュ系

HDDを一切使用せずにSSDのみを搭載したフラッシュストレージとして「AFA(オール・フラッシュ・アレイ)」や「SSA(ソリッド・ステート・アレイ)」とも呼ばれます。主にHDDの代替として利用され、サーバーに内蔵できるほか、外付けも可能なので複数のサーバー間で共有でき、大容量構成で運用することもできます。

ただし、HDDを前提とする従来の仕組みを踏襲しているため、フラッシュメモリが本来持つ高速性能を十分に発揮できていません。そのため後述するPCIeフラッシュ系と比べると、IOPS(1秒間に読み込み・書き込みできる回数)やレイテンシ(デバイスに対してデータ転送を要求してからその結果が返ってくるまでの時間)などの性能で劣ります。

 

PCIeフラッシュ系

コンピュータの部品間の接続規格であるPCI Express(PCIe)でサーバーに直接接続できるタイプのフラッシュストレージです。フラッシュメモリをサーバーのPCIeスロットに挿入して使用します。サーバーに直結して使うため「サーバーサイドフラッシュ」とも呼ばれます。

ケーブル、RAIDコントローラーやSASインターフェースなどを介さないので、SSDベースのフラッシュストレージよりも高速に読み込み・書き込みができるのが特徴です。また、Fibre Channel(SAN)など接続のためのスイッチやコントローラーが不要なので、コストや運用の面でもメリットがあります。

一方で、デメリットもあります。接続可能な枚数はサーバーのPCIeスロット数に依存するため、外付けデバイスと比べると大容量の構成にはできません。エンタープライズ用途では冗長化のためにソフトウェアRAID構成のニーズもありますが、そうすると構成可能な容量はさらに減ります。

また、当然ながら複数サーバーで共有できませんし、一般的には保守交換時にサーバーを停止する必要があります。

 

SSD + 重複排除機能系

前述したSSDフラッシュ系の製品に、重複排除(De-duplication)機能を加えたフラッシュストレージ製品です。重複排除とは、書き込みもうとするデータの中に重複するデータ領域がある場合に、1つだけをSSDに書き込み、他の重複領域と共有することでストレージ容量を削減する技術です。

重複排除技術は、これまで主にバックアップ容量を削減するために使われてきましたが、コストの低減や、書き込み回数の低減によるSSDの長寿命化を目的に、フラッシュストレージ製品でも実装されるようになりました。特にOSやオフィス系アプリケーションはデータ重複が多いため、仮想デスクトップ用のストレージにおいて重複排除は有効だとされています。

一方で、重複排除機能にはオーバーヘッドが伴うため、ストレージ装置の性能劣化につながります。パフォーマンスを重視するシステムの場合には適していません。

 

ハイブリッドフラッシュ系

ハイブリッドフラッシュストレージは、HDDとSSDを混在した構成のストレージ装置です。利用頻度が高いデータは書き込みや読み込みが高速なSSDに保存し、それほど頻繁にアクセスしないデータについてはSSDよりも安価なHDDに保存します。広範なワークロードに対応する構成だと言えます。

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フラッシュストレージの歴史

フラッシュストレージの歴史

 

フラッシュストレージの核であるフラッシュメモリの技術は、舛岡富士雄氏が東芝在籍中の1984年に発明しました。フラッシュストレージはストレージの高速化だけでなく、機器の軽量化や小型化にも貢献し、世界で利用が進みました。フラッシュメモリはいくつかの技術革新を経て、大容量化や高速化、そして低価格化を実現しています。

フラッシュストレージのこれまで

フラッシュメモリが誕生

1989年、東芝が世界初の4Mbit NAND型フラッシュメモリを発表しました。

SSDを初出荷

世界初のSSDを出荷したのはサンディスクで、1991年のことです。当時の最大容量は、わずか20MBでした。

64MbitのMLC NOR型フラッシュメモリ

サンディスクは1997年、世界初となる64MbitのMLC NOR型フラッシュメモリを発表し、ストレージ市場に大きな影響を与えました。このMLCとは1つの記憶域に複数の情報を持たせられる技術で、MLCによって後にSSDの大容量化と低価格化が進みました。

USBタイプが登場

2000年には、USBタイプのフラッシュドライブが開発されました。小型で高性能という特徴が好評を博し、ファイルの保管や転送で広く利用されました。

コンシューマPCへの普及

2006年、SSDを搭載したノートPCが登場しはじめました。さらに2007年頃からは、コンシューマ向けに店頭でSSDを購入できる機会が増えていきました。

2008年には、MLCを採用したSSDが普及しはじめ、大容量かつ低価格であることから、コンシューマ向けSSDの主流となります。それまでのSSDはSLC型が主流で、1つの記録素子に1ビットのデータを保持する技術のため速度や書き換え可能回数などで優れるものの、大容量化や価格で課題がありました。

3D型 TLC NAND型フラッシュメモリの普及

2010年代の中ごろには3D構造のTLC NAND型フラッシュメモリを採用する製品が登場し、さらに低価格化が進みました。

 

フラッシュストレージの現在の動向

SSDはフラッシュメモリ技術の革新による高密度化や生産効率向上によって、容量あたりの価格は下降傾向が続き、今後も下がり続けるものと考えられています。

低価格化も後押しとなり、SSDは普及が進みました。2020年には、四半期ベースの出荷台数でSSDがHDDを初めて追い抜きました。

HDDからSSDへの置き換えが進んだことを裏付けるように、HDDを製造するメーカーの淘汰が進みました。最盛期には数十社あったとも言われていますが、年々減少を続け、2015年以降は東芝、Western Digital、Seagate Technologyの3社グループに集約されています。そしてこれら3社では、フラッシュメモリ事業を強化しています。

フラッシュの急激な低価格化は、企業がオールフラッシュストレージを採用するハードルを下げました。

 

フラッシュストレージの未来

では、今後のフラッシュストレージはどのように発展していくのでしょうか。

メーカー各社は、SSDがストレージの主流になるという前提で開発を進めていることから、一層の高速化・大容量化・低コスト化が進むでしょう。HDDについてはさらなる大容量化や低コスト化が進む可能性があるものの、速度の改善は期待できないと考えられています。

とはいえ、当面の間はHDDが利用されなくなってしまうことは考えられません。現在のところ、やはりSSDよりもHDDが安価で、多くの企業はSSDのスピードとHDDの容量、それぞれの長所を組み合わせたハイブリッド構成を採用しています。

一方、データセンター分野では、より高速なオールフラッシュストレージを安価に手に入れたいというニーズあり、そのための技術開発が進んでいます。フラッシュメモリは現在、3D TLC NANDベースの製品が主流ですが、次世代技術としてより高速なストレージクラスメモリ(SCM)が注目されており、すでに製品化されています。

また、NVMe(Non-Volatile Memory Express)や、NVMe-oF(NVMe over Fabrics)といった新しい接続規格やプロトコルによって、フラッシュストレージの性能を最大限に引き出そうとしています。NVMeやNVMe-oFは、特にSCMと組み合わせて大規模に導入した場合のメリットが大きく、IOPSを大幅に向上でき、レイテンシも大きく低減します。

ただ、現時点ではSSDに比べるとSCMはとても高価なため、SSDのキャッシュとして利用し、コストを抑えつつストレージ全体の高速化を図るアーキテクチャが当面は主流になるでしょう。

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フラッシュストレージを導入するメリット

フラッシュストレージを導入するメリット

 

フラッシュストレージは、HDDベースのストレージに対して次のようなメリットがあります。

 

メリット1. データ処理が非常に高速

最大のメリットはアクセススピードの向上で、アプリケーションのパフォーマンスを高められます。一般的なエンタープライズアプリケーションだけでなく、HadoopやNoSQLといったビッグデータ向けデータベースを用いた分析処理も高速化します。フラッシュストレージは、DXにも欠かせないインフラだと言えるでしょう。

 

メリット2. 障害が発生しづらい

HDDにあるようなディスク(プラッタ)、モーター、ヘッドといった可動部がないため、障害も発生しにくくなります。

 

メリット3. 寿命が長くコストパフォーマンスが高い

可動部の故障を気にする必要がありません。一方で、フラッシュストレージで使用されるフラッシュは書き換え回数に上限がありライフサイクルが短いと言われてきました。しかし、一般にエンタープライズ向けフラッシュは書き換え可能な回数が多く、フラッシュストレージのコントローラー技術が進化して長寿命化が図られています。

 

エンタープライズ用途のストレージでは、RAIDによって冗長性を確保してきました。HDDの場合、高速化・大容量化を兼ねてRAID1+0構成にすることが一般的でした。オールフラッシュストレージの場合もRAIDが冗長性を確保するための選択肢となりますが、容量効率のよいRAID5構成にすることで、HDDよりも安価かつ高速なストレージを構成できるケースがあります。

オールフラッシュストレージはアプリケーションの高速化だけでなく、データセンターの経済性でもメリットをもたらします。近年、企業が扱うデータボリュームが増加しているため、HDDのストレージではデータセンターの拡張が必要になります。一方で、フラッシュは設置面積、電力コスト、冷却コストで有利なため、長期的に見ればファシリティ維持に関するランニングコストを抑えられます。

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まとめ

まとめ

 

フラッシュストレージはHDDに比べて高速であり、技術革新によって大容量化・低価格化が進み、懸念されていた寿命についても解消されてきました。エンタープライズ用途ではインフラのトレンドである仮想化、そしてDXの取り組みが重要になっていますが、それを支えるインフラとしてフラッシュストレージへの期待が高まっています。

フラッシュストレージの用途は多岐にわたりますが、従業員のデータを格納するファイルサーバーとしてNAS(Network Attached Storage)の用途にも最適です。

東京エレクトロンデバイスでは、NAS製品としてHDD、オールフラッシュタイプ双方のラインアップを取扱い、製品として揃えています。用途に合わせて性能と容量のバランスを調整した複数のモデルを用意。アーカイブ向けに大容量HDDを搭載するモデルもあります。ストレージの見直し検討されている方は、ぜひ東京エレクトロンデバイスまでご相談ください

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