シークレット管理とは?課題と「Vault(ヴォルト)」による解決策について解説 |東京エレクトロンデバイス

技術解説

シークレット管理とは?
課題とVaultによる解決策について解説

シークレット管理の概念とシークレット管理及びデータ暗号化用のセキュリティツール「Vault」についてご説明します。

  • 「シークレット」とは
  • 「シークレット管理」の意味とは?
  • セキュリティ対策とライフサイクル管理
  • HashiCorp「Vault(ヴォルト)」で課題解決!
  • まとめ

「シークレット」とは

まずシークレットとは何でしょうか?シークレットとはIDやパスワードだけでなく、アクセスキーなどの認証情報を含むものであり、システムへのアクセスに必要な鍵として機能します。

例えば、システムへのログインに使用するユーザー名やパスワード、クラウドリソースへのアクセスに必要な情報、APIトークン、HTTP通信の暗号化に使用されるTLS証明書やSSH通信の暗号化鍵などが含まれます。これらの情報は非常に機密性が高いため、絶対に漏えいや紛失を防がなければなりません。

「シークレット管理」の意味とは?

一般的に、パスワードやAPIキー、証明書、トークンなどの機密情報を安全に取り扱い、保管するプロセスを指します。このプロセスには、シークレットを作成し保管することから始まり、シークレットに権限を付与してアクセスを制御し、さらには不正な使用を監視し、また定期的に更新や必要がなくなった場合は廃棄するといった作業が含まれます。

これらの一連の手順をライフサイクル管理と呼び、適切な管理は情報漏えいのリスクを最小限に抑え、システムのセキュリティを維持する上で非常に重要です。

セキュリティ対策とライフサイクル管理

セキュリティ対策には予防的統制と発見的統制という、様々な脅威から保護するための2つの重要なアプローチがあります。予防的統制は、セキュリティ侵害や不正行為を未然に防ぐことを目指しており、攻撃が行われる前に対策を講じることに重点を置いています 。 

シークレット管理では、最小限の権限しか与えず、パスワードを定期的に変更するなどの取り組みがあります。一方、発見的統制は、セキュリティ侵害や不正行為が発生した際にそれを検出し、記録することを目的としています。シークレット管理においては、ログに活動履歴を残すことや、異常な振る舞いを通知する仕組みが重要です。予防的統制と発見的統制、そしてライフサイクル管理は相互に関連し合い、ライフサイクル管理は、予防的統制と発見的統制の措置が効果的に機能するための基盤を提供する位置付けになります。 

 セキュリティ対策には、重要なポイントがいくつかあります。例えば、クラウド事業者のWell-Architectedフレームワークには、ライフサイクル管理と予防的統制、発見的統制などが含まれています。さらに、定期的な鍵の更新や権限の詳細設定 、監査記録の取得などが挙げられます。これらの対策を取ることで、不正利用の抑制や追跡が可能となり、データの暗号化の方法も定義されています。 

複数の場所に散在して管理されたシークレットが、コントロール不能になり、外部からのシークレット保護が難しくなる問題が生じます。 

また、シークレットへのアクセス制御が不十分であり、同じシークレットが 複数の場所で長期間使用されると情報漏えいリスクが高まります。 さらに、統一された管理ルールがないと、プロジェクトごとに異なる規則に 対処する必要があり、複数のシークレット管理システムからの手間や、承認 プロセスによる時間のロスにより、シークレットの活用までの時間がかかり、 生産性が低下します。 

HashiCorp「Vault(ヴォルト)」で課題解決!

シークレット管理はHashiCorp社が提供する「Vault」を共通基盤として使用することで効率的に行えるようになります。クライアント側で自由にシークレット管理するのではなく、必ずVaultを介して、適切な権限が付与されたシークレットを利用します。また、Vaultで管理しているシークレットを利用する際には、必ずVaultの認証・認可が必要になります。 

 Vaultを利用することで、クライアントごとに短期間かつ一意のシークレットを利用でき、長期的な利用や再利用による情報漏えいリスクを軽減できます。そして、Vaultにはシークレットのライフサイクル管理を自動で行う機能が備わっております。この機能を活用することで、管理者はシークレットのライフサイクル管理から解放され、他の業務に集中することができ、生産性が向上します。 

まとめ

従来のシークレット管理の運用における問題は、手作業でキー管理を行う必要があり、静的な運用を行っていることから発生します。例えば、一度発行したキーの管理が複雑であったり、不要なキーを特定したり、使用中のキーを追跡することが困難です。その結果、同じキーを繰り返し使用することになり、長期間使用し、セキュリティ上のリスクとなる可能性があります。また、手作業で静的に運用をすると、アプリケーションの設定ファイルに直接シークレットを記入せざる得ない状況となり、 権限管理が複雑化し、誰がどんな権限を持っているのかが把握しにくくなる場合があります。 

 これらの課題に対処するために、Vaultを使用すると、シークレットをVaultで集中管理でき、短期間使用するシークレットの発行やローテーションを自動化することができ、外部のIDプロバイダと連携して詳細な権限管理ができるようになります。その結果、シークレットの管理が向上し、短期間の運用により安全にシークレットを使用できるようになります。 

 

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